2016 Fiscal Year Research-status Report
単球/マクロファージの血管壁通過と組織定着を制御する新規候補分子の検証
Project/Area Number |
15K07769
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
小川 和重 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (60231221)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | EphA / ephrin-A / 単球 / マクロファージ / インテグリン / 脾臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. EphAシグナルのインテグリン制御 昨年度までに,単球分化モデルとして汎用される骨髄性白血病株HL60を材料に「単球のEphA,ephrin-Aシグナルは細胞接着を誘導・促進する」ことを明らかにしている。細胞接着性の基盤となる性状を把握するため,未処置および単球に分化誘導したHL60を材料に,インテグリンタンパクの細胞表面発現を検討した。未処置と分化誘導のHL60でβ1インテグリンの発現レベルに差は認められなかったが,β2インテグリンの発現レベルは単球分化誘導HL60で高かった。単球分化誘導HL60ではEphA2,EphA4の発現誘導が認められるため,EphAのインテグリン制御機構解明の有用な材料になる。 2. EphA/ephrin-Aシグナルと在住マクロファージ(Mφ)の組織定着 赤脾髄Mφの組織定着機構について,in vivoでEphA2が関与する可能性が高いことを示唆する結果が得られたので,赤脾髄Mφと赤脾髄線維芽細胞を材料にin vitroで検討した。(1)赤脾髄Mφと赤脾髄線維芽細胞はそれぞれ数種類のEphAとephrin-Aを細胞表面に発現していること,(2)赤脾髄Mφはインテグリンα4β1,αMβ2,αXβ2タンパクを,赤脾髄線維芽細胞は対応するインテグリンリガンドVCAM-1と,ICAM-1を細胞表面に発現していること,(3)赤脾髄線維芽細胞のEphAを活性化させると,ICAM-1発現レベルが有意に上昇すること,(4)赤脾髄Mφのephrin-AおよびEphAを活性化させるとICAM-1およびVCAM-1吸着基質への接着性が増強することを明らかにした。これらの結果から,赤脾髄Mφと赤脾髄線維芽細胞の細胞接触により発生するEphA/ephrin-Aシグナルは,両細胞間の接着性増強を介して赤脾髄Mφの組織定着に働くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「EphAのインテグリン活性化調節機構の解明」に関しては,細胞材料としてHL60が有用であることを示し,予備実験レベルであるが,赤脾髄Mφを材料にEphAおよびephrin-Aの活性化はインテグリンを活性化させるSmall GTPタンパクの活性化を誘導することを見出したが,進捗状況としてはやや遅れている。 一方,もう一つの研究の柱となる「EphA/ephrin-Aシグナルの在住Mφの定着制御機構」に関しては,想定以上に研究が進展し,脾臓の在住Mφである赤脾髄MφのEphA/ephrin-Aシグナルを介した細胞定着機構の概要を解明することができた。この研究進展は,赤脾髄Mφの増殖・継代・分離法の開発・確立の寄与が大きいと考えている。これまでに組織在住Mφの分離法は確立されており,実験動物の肝臓,肺,脾臓,脳などを材料にMφマーカータンパクを標識して組織在住Mφを分離し研究材料として用いているが,成体の組織在住Mφを継代し大量に増殖させた報告は,代表研究者が調べた限り見当たらない。開発した方法は脾臓以外の組織在住Mφにも適用可能であると判断でき,広範な活用が期待できるため想定を超える研究成果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. EphAシグナルのインテグリン制御 単球/MφにおけるEphAのインテグリン制御機構の全容解明をin vitroで行う。これまでに,EphA2のエクトドメインはインテグリンを活性化して単球/Mφの細胞接着性を上昇させることを明らかにしている。J774.1(単球/Mφ株)とU937(単球株で薬剤によりMφに分化)の親株とEphA2ΔC-EGFP 発現亜株,HL60(薬剤で単球に分化誘導),赤脾臓Mφなどを材料にEphAシグナルの下流分子に対する阻害剤およびインテグリンの阻害剤を活用して,Cell adhesion stripe assay,免疫沈降とブロット,Beads adhesion assayなどでEphAのインテグリン制御機構を解析する。 2. EphA/ephrin-Aシグナルと在住Mφの組織定着 これまでに赤脾髄Mφの増殖・継代・分離する簡便な方法を開発し,平成28年度に赤脾髄Mφの組織定着機構の概要を解明した。また,類似の方法でクッパー細胞も増殖させることができる。クッパー細胞の増殖・継代・分離を確立させ,組織定着機構についてセルアナライザーによる発現解析,Cell adhesion stripe assayなどを活用して検証する。在住Mφの移植治療は開発段階にあり,効率的な移植技術の開発は重要な研究課題となる。そこで,当該項目にも重点を置き研究を進めるとともに,重要であると判断される肺および脳の在住Mφについても増殖・継代・分離法の開発を試みる。
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Causes of Carryover |
繰越金額は1,813円であり,ほぼ予定通りの予算を使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金額の1,813円は消耗品に当てる。
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