2017 Fiscal Year Research-status Report
てんかん~うつ・不安障害に至る分子発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K07774
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
加藤 啓子 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90252684)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 喜明 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (40512455)
黒坂 光 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (90186536)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | てんかん / うつ / 不安症 / シアル酸転移酵素 / 代謝 / 疾患モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は,てんかん~うつ・不安障害に至る分子発症メカニズムを解明することを最終目標に研究を進めており,当該研究では,シアル酸化標的分子を同定し,てんかんとその併存症であるうつ,不安障害の発症に関わる分子シグナルを明らかにすることを目的としてきた。当初,シアル酸転移酵素(ST3Gal4)の発現が,てんかん発作誘導に必須であり,その欠失は,うつ,不安障害を引き起こすことを見つけていた。そこでST3Gal4 酵素がシアル酸を付加する受容体基質である,シアル酸化標的分子の同定を試みていた。一方,研究が進むに従い,St3gal4は,脳だけでなく,血中の脂肪酸組成やアミノ酸代謝に影響することがわかってきた。ヒト一ST3GAL4 遺伝子多型が,高脂質血症を含む脂質代謝系に影響を与えていることからも,脳と末梢組織間の代謝の分配がてんかん~うつ・不安障害に作用する可能性が見えてきた。そこで末梢組織のどこに焦点をあわせるのかを調べるため,尿中の最終代謝産物をガスクロマトグラフィー質量分析計により解析し,in situ hybridizationによりSt3gal4 mRNAの発現組織と細胞の特定を試みた。結果,高齢者うつとうつ・不安症モデルマウス共に同一の,2種の脂質代謝産物(AとB)が尿中排泄量を亢進し,うつ及び/又は不安症バイオマーカーとして,ヒト及びマウスを対象に2件の特許出願に至った。次に,in situ hybridizationによりSt3gal4 mRNAは,食道粘膜上皮基底部や腸陰窩における粘膜上皮細胞で強い発現を示した。以上の結果は,マイクロダイセクション法により脳・視床内側膝状体と食道粘膜上皮基底部及び腸陰窩を切り出し,糖タンパク質を抽出後,ST3Gal4 酵素によりシアル酸付加を受ける受容体基質の探索を可能にした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シアル酸転移酵素 St3gal4は視床内側膝状体で強い発現を示す。そこで,マイクロダイセクション法によりSt3gal4遺伝子欠損マウス脳から視床内側膝状体を切り出し,N型糖鎖構造を明らかにした。結果,St3gal4遺伝子欠損マウスでは,α2,3-シアル酸修飾のない糖鎖構造の増加と,α2,3-シアル酸化糖鎖構造の著しい減少を観察した。この知見は,今後の受容体基質・糖タンパク質の同定に道をつなげた。 ヒト一塩基多型解析は,ST3Gal4 遺伝子多型が,高脂質血症を含む脂質代謝系に影響を与えていることを示している。その一方,本研究が進むに従い,うつ,不安症モデルマウスであるSt3gal4遺伝子欠損マウスの血中における,脂肪酸組成やアミノ酸代謝が野生型と異なっていることを見つけた。そこで脳と末梢組織間の代謝の分配がてんかん~うつ・不安障害に作用する可能性を考え,末梢組織のどこに焦点をあわせるのかを調べることにした。具体的には,尿中の最終代謝産物をガスクロマトグラフィー質量分析計により解析するのと並行して,in situ hybridizationによりSt3gal4 mRNAの発現組織と細胞の特定を試みた。結果,高齢者うつとうつ・不安症モデルマウス共に同一の,2種の脂質代謝産物(AとB)が尿中排泄量を亢進し,うつ及び/又は不安症バイオマーカーとして,ヒト及びマウスを対象に2件の特許出願に至った。次に,in situ hybridizationによりSt3gal4 mRNAは,食道粘膜の重層扁平上皮基底部や腸陰窩における粘膜の単層円柱上皮細胞で強い発現を示した。以上の結果は,マイクロダイセクション法により脳・視床内側膝状体と食道粘膜上皮基底部及び腸陰窩を切り出し,糖タンパク質を抽出後,ST3Gal4酵素がシアル酸を付加する受容体基質の探索を可能にした。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで,脳内のSt3gal4 mRNAの発現分布について,てんかん発作誘導に伴う発現も含めて,詳しく観察してきた。本研究では,末梢組織におけるSt3gal4 mRNAの発現組織と細胞の特定に成功し,代謝との関連性を示唆する発現傾向を見つけることができた。特に,食道粘膜の重層扁平上皮基底部や腸陰窩における粘膜の単層円柱上皮細胞で強い発現を示した。腸陰窩における粘膜上皮細胞は,ホルモン産生細胞,防御機能をもつパネート細胞,そして幹細胞からなる領域である。食道粘膜では,重層扁平上皮基底部の上皮細胞がSt3gal4を強く発現していたが,その一方で,膣や子宮頸,皮膚では,重層扁平上皮は陰性であった。以上のことから,食道粘膜の重層扁平上皮基底部での発現は,幹細胞由来である可能性は低い可能性がある。今後は,St3gal4遺伝子欠損マウスと野生型マウス間における粘膜上皮細胞の遺伝子発現及び,糖たんぱく質の違いを比較する予定である。こうした発現解析により,細胞の特定を含めて,St3gal4による消化管を中心とした代謝システムを明らかにすることが可能となるであろう。 ST3Gal4がシアル酸を付加した受容体基質である,シアル酸化標的たんぱく質の同定は,当初予定していた研究内容であったが,今後も引き続き推進していく。具体的には,マイクロダイセクション法により脳・視床内側膝状体と食道粘膜上皮基底部及び腸陰窩を切り出し,糖タンパク質を抽出後,シアル酸化標的たんぱく質を同定する。発現場所と機能の相関が明らかになったこと,質量分析装置を用いた解析に習熟したことから,シアル酸化標的たんぱく質の同定の可能性は,飛躍的に高い。
|
Causes of Carryover |
これまでシアル酸転移酵素欠損オスマウスを用いて代謝産物を同定し,てんかんとその並存症に関わる分子を特定してきたが、本年度の研究より,シアル酸転移酵素欠損マウスにおいて,オスとメスの代謝が異なる知見を新たに得た。そこで,メスマウスにおいてもオスマウスと同様の手法による分子を特定するための追加実験を実施するため,次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(6 results)