2015 Fiscal Year Research-status Report
非炎症型三次元培養皮膚モデルの開発と各種アッセイ系への適用に関する研究
Project/Area Number |
15K07777
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
新井 浩司 東京農工大学, 農学部, 准教授 (70293016)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 三次元培養皮膚モデル / 炎症 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
三次元培養皮膚モデル系は生体皮膚に近い組織構造を生体外で再現する方法である。しかし従来の三次元培養皮膚モデルは表皮-真皮間の基底膜の形成が不完全であり、また、表皮角化細胞由来のサイトカインや増殖因子が真皮層の線維芽細胞を常時刺激して炎症に近い状態であるなど、正常な皮膚機能を研究するモデルとしては問題もある。本研究はこのような問題を解決した非炎症型三次元培養皮膚モデル系を確立することを目的としている。非炎症型の皮膚モデル系を作製するためには表皮由来の因子による真皮線維芽細胞の無秩序な刺激を抑制することが要求される。表皮-真皮間の無秩序な液性因子の拡散防止には、問題となる液性因子の分泌を抑制するか、あるいは表皮-真皮間の基底膜構造を改善させて液性因子に対する強固な障壁を構築するかの二つの対応が候補として挙げられる。正常表皮角化細胞では炎症性サイトカインであるIL-1の分泌活性が高く、表皮角化細胞由来のIL-1が真皮層の線維芽細胞を刺激しているため、27年度の研究では正常表皮角化細胞の代わりに、表皮角化細胞由来の株化細胞であるHaCaT細胞を用いることを試みた。まず、HaCaT細胞で皮膚モデルを作製するための適切な条件を検討し、培地条件やカルシウム濃度などを決定した。HaCaT細胞はIL-1の分泌活性が低いため三次元培養皮膚モデルに使用しても炎症反応を引き起こさない利点があるが、表皮層を増殖、重層化させるには培養初期にIL-1が必要とされる。そこでテトラサイクリン調節性プロモーター下流にIL-1α遺伝子を挿入した発現コンストラクトを作製し、これを用いてHaCaT細胞の安定変異株の作製を試みている。また、表皮真皮間に良好な基底膜構造を構築させるため、基底膜の主要な構成成分であるIV型コラーゲンの高発現コンストラクトを作製し、これを安定的に導入したHaCaT細胞株の作製も試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HaCaT細胞を用いた三次元培養皮膚モデル系の構築条件を検討し、HaCaT細胞で安定して比較的良好な皮膚モデルを作製するための条件は判明した。しかし、IL-1α遺伝子やIV型コラーゲンの発現コンストラクトが安定的に導入されたHaCaT細胞の選択に予想以上に時間がかかっている。これまで申請者はいくつかの細胞株で外来遺伝子の安定発現株を作製しているが、申請者の経験から考え、HaCaT細胞は安定発現株の作製が比較的難しい細胞株であることが推察される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度前半までに目的の遺伝子を安定的にに導入したHaCaT細胞を選択する。その細胞を用いて三次元培養皮膚モデルを作製し、その特性を解析してそのモデル系が非炎症型三次元培養皮膚モデルとして適した物か否かを検討する予定である。
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