2016 Fiscal Year Research-status Report
CRISPR/Casを用いた不妊原因遺伝子の同定とその分子機能の解明
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15K07778
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
与語 圭一郎 静岡大学, 農学部, 准教授 (60362844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 渉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40708161)
伊藤 千鶴 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80347054)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 精子形成 / 不妊 / アンドロロジー / 生殖細胞 / ノックアウトマウス / ゲノム編集 / 受精能獲得 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年,雄性不妊に関わる2つの遺伝子(Slc22a14とDlec1)を同定した。今年は,その2つの遺伝子の機能や局在について解析した。その研究概要は次の通りである。 Slc22a14:これまでの研究で,本遺伝子を欠損すると,精子鞭毛がヘアピン状やV字状に曲がってしまい,運動能が低下していることを見出していた。本年は,その原因について解析を行った結果,細胞内の浸透圧の異常や鞭毛の構造タンパクの発現や局在の異常であることが明らかとなった。また,本遺伝子の精子は運動能が低いだけでなく,受精能獲得にも異常があることを見出した。以上の結果から,Slc22a14は精子機能に複合的な問題を抱えているため,重度の繁殖能力の低下が引き起こされることが示唆された。 Dlec1:Dlec1は精子分化に必須の働きをもつことを昨年見出した。今年は,Dlec1の分子機能の解明に必要な,抗Dlec1抗体の作製を行った。様々な部位のDlec1を抗原に用い,抗体の作製を試みたが,内在性のDlec1の免疫染色や免疫沈降に利用可能な抗体を得ることはできなかった。そこで,Dlec1のC末端にFLAGタグを付加したマウスをゲノム編集技術を用いて作製した。現在,このマウスを交配により増やし,既存の抗FLAG抗体で免疫染色や免疫沈降を行えるかどうか検討中である。一方,Dlec1-KOマウスの精子分化の異常について詳細に解析したところ,KIF3Aなど微小管上の物質輸送に関わる遺伝子のノックアウトマウスの異常と非常に一致する点が多いことを見出した。このことから,Dlec1は微小管上物質輸送に関わっている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は,不妊原因遺伝子の分子機能について解析していく計画であった。Slc22a14については,その輸送能が失われることにより細胞内の浸透圧異常が引き起こされることを明らかにできたほか,この輸送体が受精能獲得に関わっていることも明らかにできた。Dlec1については期待したとおりの抗体ができなかったものの,FLAGタグのノックインマウスを作製できたので,今後,解析が進むことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
Slc22a14に関しては,なぜ本遺伝子を欠損すると受精能獲得が進まなくなるのか,その分子メカニズムを解析する予定である。また,Dlec1については,抗体の作製について再度試みるほか,FLAGタグノックインマウスを用いて,Dlec1の局在や相互作用タンパク質の同定をこことみる予定である。
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Causes of Carryover |
試薬などを購入するには少なすぎる額(249円)が残ってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて必要な物品を購入する予定である。
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