2016 Fiscal Year Research-status Report
哺乳動物の初期胚におけるニュートリエピジェネティクス
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15K07779
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 俊太郎 京都大学, 農学研究科, 助教 (50447893)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / ニュートリエピジェネティクス / 初期胚 / 着床前胚 / ウシ / One-carbon metabolism |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①前年度のChIP-seq解析で同定したメチオニンアデノシルトランスフェラーゼII(MATII)の触媒サブユニットMAT2Aが結合するDNA領域の候補のいくつかについて、ChIP-qPCRを用いてMAT2Aとの相互作用を確認するとともに、上記候補近傍の遺伝子についてジーンオントロジー(GO)解析を行った。その結果、着床前胚発生のみならず成長・代謝・免疫機能・ストレス応答に関連するGOタームが有意となった。②ウシ着床前胚の体外培養系におけるMAT2Aの機能阻害方法として、前年度は低分子阻害剤を用いた方法を使用したが、より特異性の高いRNAiを用いた阻害条件を確立した。この条件でも前年度と同様に胚盤胞発生の著しい阻害が起こった。③MAT2Aの触媒反応を含むOne-carbon metabolismを活性化する目的でビタミンB群ミックスを添加する方法を試行した。この条件では胚盤胞発生の促進が起こるとともに、着床前胚のストレス応答とその後の発生を通じた成長・代謝形質のプログラミングに関わる遺伝子の発現の変化が、当該遺伝子近傍のヒストンのメチル化の変化とともに起こった。②と③の結果は、前年度のMAT2Aの機能阻害試験の結果も合わせ、MATIIによるメチオニンの代謝が胚盤胞発生という短期の影響(short-term effects)のみならず、エピジェネティック機構を介してその後の成長・代謝という長期の影響(long-term effects)にも関与していることを示唆している。さらにこの機構には、①で解析した遺伝子がMATIIとの直接の相互作用を介して関与していることも想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家畜初期胚のニュートリエピジェネティクス(栄養環境によるエピジェネティクスを介した遺伝子発現への影響)の基盤解明の一つとして、メチオニン代謝を切り口した解析を実行できた。網羅的解析でピックアップした遺伝子についての発現およびエピジェネティック修飾の解析が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
MATIIの機能阻害や活性化方法を用いて、特にlong-term effectsに関与する遺伝子の発現とエピジェネティック修飾に及ぼす影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
遺伝子の機能阻害方法として未実施の方法を次年度に行うこととしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子の機能阻害に使用するRNAの購入費用として、翌年度分として請求した助成金の一部と合わせて使用する。
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