2015 Fiscal Year Research-status Report
抗原特異的モノクローナルT細胞レセプターを介する免疫機構の解明
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15K07787
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
神沼 修 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (80342921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 貴美子 国立研究開発法人理化学研究所, 遺伝子工学基盤技術室, 専任研究員 (70360500)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クローン動物 / アレルギー / T細胞 / T細胞受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)クローンマウスにおける生物学的異常の確認: 当初計画に準じ、申請者らが作出したクローンマウスについて、解剖学的、生理学的および血液学的な検査を実施した。その結果、体重やリンパ組織重量等には特に影響はみられなかった。胸腺および末梢リンパ組織におけるさまざまな免疫・炎症細胞数の変化についてフローサイトメトリーを利用して詳細な解析を行ったところ、γδT細胞およびNKT細胞の劇的な減少が共通して認められたのに対し、抹消および胸腺CD4陽性およびCD8陽性T細胞数はクローンマウス間で異なる変動を示すことが明らかとなった。 (2)クローンマウスとTCR-Tg マウスにおける免疫学的相違: これまでTCR-Tg マウスを用いて解析されてきた免疫反応について、クローンマウスとTCR-Tg マウス間で比較解析した。各クローンマウスのCD4陽性T細胞を特異抗原で刺激培養すると、Th1, Th2, Th17サイトカインをはじめとする種々のサイトカイン産生パターンがクローンマウス間で大きく異なっていた。その中で、各サイトカインをほぼ均等に産生するDf#1クローンに対し、Df抗原を経気道的にチャレンジすると、好酸球浸潤およびIL-4, IL-5およびIL-13産生を伴うTh2タイプの気道炎症が惹起された。一方、OVA 特異的DO11.10 マウスに抗原を経気道的に暴露すると、Th17/Th1 優位な好中球性炎症が誘発され、クローンマウスはTCR-Tgマウスとは異なる免疫学的性質を示すことが明らかとなった。 (4)各抗原特異的TCR鎖における単独の役割および発現量の違いによる影響: クローンマウスと正常マウスを交配し、TCRαまたはβのみが抗原特異性を示すマウスを得て検討したところ、(1)でみられたγδT細胞およびNKT細胞の劇的な減少は、再構成されたTCRβ鎖の発現に起因することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画した(1)クローンマウスにおける生物学的異常の確認および(2)クローンマウスとTCR-Tg マウスにおける免疫学的相違に関する詳細なデータが順調に得られているだけでなく、次年度以降に計画していた(4)各抗原特異的TCR鎖における単独の役割および発現量の違いによる影響に関する知見も得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた(4)各抗原特異的TCR鎖における単独の役割および発現量の違いによる影響についてはすでにデータが得られつつあることから、それをさらに推進させるだけでなく、(5)エピトープ間相互作用の解析や(6)免疫応答機構におけるTCR親和性の意義に関する検討も当初計画に先んじて進める。また、ダニアレルゲンに反応するクローンマウスが得られたことによって、アレルギー疾患研究への応用性が高まったことから、その利用価値に関する基礎的な検討も実施したい。
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