2015 Fiscal Year Research-status Report
共生細菌が持つ雄殺し遺伝子の同定とその利用基盤技術の開発
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15K07806
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安佛 尚志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (30392583)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 共生細菌 / 生殖操作 / ゲノム / スピロプラズマ / ショウジョウバエ / ファージ / 次世代シーケンサー / 雄殺し |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエの共生細菌スピロプラズマは、宿主の雄を胚発生期に殺す「雄殺し」と呼ばれる生殖操作をおこなう。これまで、スピロプラズマが難培養性であること等からミュータントスクリーニングやゲノム決定が困難であり、雄殺しの原因因子は特定されていなかったが、次世代シーケンサー等の解析技術の進歩によりスピロプラズマの全ゲノム解析も可能となった。そこで今年度は雄殺しスピロプラズマ2系統、雄を殺さなくなった突然変異スピロプラズマ1系統の全ゲノム決定を試みた。まず、スピロプラズマ感染ショウジョウバエから抽出した全DNA(共生細菌ゲノムを10-50%含む)よりゲノムライブラリを作製し、次世代シーケンサーのPacBioRSⅡによるシーケンシング、ロングリードのアセンブルをおこなった。次に、得られたコンティグの相同性検索により、既知のスピロプラズマゲノムと高い相同性を示す10コンティグを各系統につき取得した。コンティグの合計長は 約2.1Mbで、先行研究で予想されていたゲノム長1.89Mbを超えていた。ゲノム中には10-11コピーのファージ様配列が存在し、ゲノムの約10%を占めており、コンティグ結合を妨げる要因となっていた。各ゲノム上には2,400以上の遺伝子が推定され、そのゲノム上の位置も含めて3系統間で極めてよく保存されていた。雄殺し系統と非雄殺し系統間でゲノム中のファージ様配列の挿入位置や数に違いはなく、また大規模な挿入や欠失等の変異も検出されなかった。今後は遺伝子レベルの詳細な比較解析により、雄殺し遺伝子の同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、ショウジョウバエで雄殺しを起こすスピロプラズマ2系統および非雄殺しスピロプラズマ1系統の全ゲノム配列の決定を第一の目標にしていたが、それをおおむね達成することができた。遺伝子のアノテーション(注釈付け)作業も順調に進んでいる。比較ゲノム解析にも着手し、非雄殺しスピロプラズマゲノムにおいて、大規模な挿入や欠失等の変異が存在しないことが推測できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)3系統のスピロプラズマの完全ゲノム解読と遺伝子のアノテーション作業を完了する。 2a) 比較ゲノム解析により、非雄殺しスピロプラズマにおいて機能が失われた遺伝子をリストアップし、雄殺し遺伝子の候補を取得する。 2b)スピロプラズマの全ゲノムクローニングやマイコプラズマへの大規模遺伝子導入を試みる。それらがうまくいけば、作出したマイコプラズマを用いて雄殺しや共生に関連する遺伝子の探索をおこなう。 3)取得した雄殺し遺伝子候補について、ショウジョウバエや大腸菌の発現系を用いた生物検定を行い、雄殺し遺伝子を同定する。 4)雄殺し遺伝子やその産物をショウジョウバエ以外の昆虫で利用するための技術基盤を開発する。
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Causes of Carryover |
申請の段階では、初年度は次世代シーケンサーによるゲノム決定に多額の予算が必要となることを想定していたが、他の支援制度の利用等によって、それにかかる費用を抑えることができたため。また、計算機による解析が中心となり、試薬や実験機器への支出が少なかったことも理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分については、ゲノム解析に用いるためのソフトウェア(一般的に高額なものが多い)の購入に充てる予定である。
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