2016 Fiscal Year Research-status Report
共生細菌が持つ雄殺し遺伝子の同定とその利用基盤技術の開発
Project/Area Number |
15K07806
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安佛 尚志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ, 主任研究員 (30392583)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 共生細菌 / 生殖操作 / ゲノム / スピロプラズマ / ショウジョウバエ / ファージ / 次世代シーケンサー / 雄殺し |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエに感染して、胚発生初期の雄を特異的に殺す「雄殺し」と呼ばれる生殖操作をおこなう共生細菌スピロプラズマの持つ雄殺しの原因遺伝子の同定を目的とし、雄殺しスピロプラズマ2系統(NSRO, MSRO)および雄を殺さなくなった突然変異系統(NSRO-A)の計3系統について、完全ゲノムの決定と比較ゲノム解析に取り組んだ。昨年度に得られた各スピロプラズマ系統のドラフトゲノム上に推定された約2,400の遺伝子について、アミノ酸の相同性に基づくアノテーションを行った。オス殺し系統のNSROを例に挙げると、2,478遺伝子のうち、大部分(75%)が機能未知のタンパク質をコードしていることが示された。アノテーションがついたものは613遺伝子であり、機能の内訳としては遺伝子制御系の遺伝子が最も多く、次いで代謝系、環境シグナル、細胞プロセスに関わる遺伝子が多かった。また、非オス殺し突然変異系統のNSRO-Aにおいて変異が生じた遺伝子を検出するため、雄殺し系統のNSROとの間でゲノム上にコードされたアミノ酸の比較を行ったところ、およそ8%(209)の遺伝子にアミノ酸変異が生じていることが示唆された。今後は、これらの変異について詳細に解析を進める予定である。一方で、各ドラフトゲノムは極めて相同性の高いファージゲノムの挿入により10コンティグに分断されており、完全長ゲノムを得るため、次世代シーケンサーPacBioRSIIのリードデータのうち、ファージ全長の19kbを超えるリードによるコンティグの結合を試みているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子のアノテーション作業と比較ゲノム解析による雄殺し遺伝子候補のリストアップについてはほぼ予定通りに行うことができたが、完全長ゲノムの取得については目立った進捗が得られなかった。またスピロプラズマの全ゲノムクローニングやマイコプラズマへの遺伝子導入については、連携研究者の異動もあり着手することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1a)取得した雄殺し遺伝子候補について、ショウジョウバエや大腸菌の発現系を用いた生物検定を行い、雄殺し遺伝子を同定する。 1b)ファージ配列によって分断されたドラフトゲノムを結合し、完全長ゲノムを決定する。 2)雄殺し遺伝子やその産物をショウジョウバエ以外の昆虫で利用するための技術基盤を開発する。
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Causes of Carryover |
予定していたスピロプラズマの全ゲノムクローニングに着手できなかったことから、試薬等の消耗品使用額が予想より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スピロプラズマゲノムの再解析、組換えショウジョウバエや組換え大腸菌の作製等に充てる。
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