2015 Fiscal Year Research-status Report
野生種を利用したイネ耐塩性関連遺伝子座の同定と耐性品種育種に向けた基盤確立
Project/Area Number |
15K07810
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
堀江 智明 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (90591181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 亮 神戸大学, 農学研究科, 助教 (70467687)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝資源 / 耐塩性 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは、現代の栽培イネ(Oryza sativa)の祖先野生種と考えられる野生イネ(Oryza rufipogon)とジャポニカ米の栽培種二種(日本晴、コシヒカリ)の交雑系統群を利用し、重要な耐塩性関連遺伝子の単離同定を目指すものである。利用予定の二種の交雑系統群は、染色体断片置換系統群(CSSLs:野生イネXコシヒカリ)、および戻し交雑組み換え自殖系統群(BRILs:野生イネX日本晴)である。申請の段階で、Na+に加え、K+, Ca2+, Mg2+の塩ストレス下における蓄積に、野生イネと日本晴の間に顕著な差があることは判明していた。そこでCSSLsの親系統である野生イネとコシヒカリで、日本晴との間に認められたような差が存在するか、まずは調査した。野生イネ、コシヒカリを、それぞれ発芽後3週齢ほどまで水耕栽培で育成した。その後、各植物を、水耕溶液に50 mM NaClを加えた塩ストレス条件で3日間処理し、若い葉身部、葉鞘、根の3部位に分けて試料を採取し、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により、主要元素の一斉分析を行った。その結果、当初の予想に反して、野生イネとコシヒカリの間には、本プロジェクトにおいて重要な二元素あるNa+およびK+の蓄積様式に、いずれの部位においても有意な差は認められなかった。Ca2+, Mg2+の蓄積に関しては、野生イネ‐日本晴間同様の蓄積様式の差が存在していた。従って、本プロジェクトは、BRILsを用いた塩ストレス下におけるイオノミクス解析を優先的に行うことに決定し、159系統から構成される同交雑系統群のスクリーニングを開始した。今年度の実験結果をもとに、より効率的に有用遺伝子座の選抜を行う事ができるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
BRILsをもとにスクリーニングを開始するにあたり、共同研究者との協議の結果、初段階のスクリーニング過程を迅速かつ簡易にするために、週齢の若い植物を使用し、かつ試料は地上部、地下部の2部位として進める事を試みた。およそ発芽後2週齢の植物に塩処理を施し、ICP解析によるイオンの蓄積を見るスクリーニングを開始した。予想に反して、その条件での日本晴と野生イネの地上部のNa+の蓄積に、3週齢植物を使用した際に観察された有意な差が認められなかった。そのため、同時に数系統を用いて開始していたスクリーニングのデータが有効なものして扱えない状況になり、一時保留となった。前回のイオン蓄積に関する表現型の再現性を確認するために、急きょ、3週齢の親系統を再度準備し、ICP解析実験の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
BRILsの親系統の再現性実験を終え次第、159の各系統を順次水耕栽培にて生育させ、発芽後3週齢の植物に塩ストレスを処理したのち、若い葉身、葉鞘、根の最低3部位に分けて試料を採取し、ICPによるイオノミクススクリーニングを本格化させる。H28年度中には、全てのスクリーニングを終え、各イオン別に候補系統を選抜、研究分担者とともに後代の作製に着手して(一部すでに後代集団あり)、適宜遺伝子マッピングへと進んでいく。また、ICPでは正確に定量することが困難な重要元素Cl-に関しては、陰イオンクロマトグラフィーやCl-電極を使った部位別の蓄積量の定量化とスクリーニング系の立ち上げを完遂する。
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Causes of Carryover |
先の研究の進捗状況欄で言及した通り、本年度の研究成果の一部に予期せぬ結果が含まれていたため、全体的に予定よりも実験計画に遅れを生じてしまった事が、次年度使用額の発生の主たる要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在進める再現性実験を済ませたのち、当初計画していたスクリーニングを本格的に開始し、解析予定の159系統の全ての元素一斉分析を完遂する。そこでH28年度請求額とあわせて次年度使用額も、主として消耗品費や実験試料解析費用として使用する。また、技術的な問題から重要元素であるCl-の蓄積を、前述の元素一斉解析とは独立して進める必要がある。その測定系の立ち上げ、および本番解析にも、次年度使用額の一部を使用する予定である。
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