2015 Fiscal Year Research-status Report
植物の新しい正の成長調節因子二酸化窒素のセンシング遺伝子の特定と受容機構の理解
Project/Area Number |
15K07813
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 美佐 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10294513)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 二酸化窒素 / 胚軸長 / バイオマス / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請者は、大気中に含まれる二酸化窒素は光形態形成(光による胚軸伸長抑制など)、栄養成長 (バイオマス蓄積)および生殖成長(花芽形成)を促進し、植物成長を正に制御する因子であるとの作業仮説を提起している。該制御において、二酸化窒素シグナルを受容し細胞内シグナルに変換するセンシング遺伝子は核心的役割を果たすと考えられる。その解明は、新しい植物生物学の展開や新規学術領域の創成、また画期的農業生産技術の開拓につながる可能性がある。そこで本研究は、まず二酸化窒素による胚軸伸長抑制形質を指標として、T-DNA挿入ラインを対象として同形質を欠損した二酸化窒素非感受性株を選抜して二酸化窒素シグナルを受容し細胞内シグナルに変換するセンシング遺伝子の特定を目ざす。 平成27年度は、明所、二酸化窒素存在下で胚軸が野生株より長くなる二酸化窒素非感受性株のスクリーニングを行った。実験材料として機能欠失変異体であり、機能欠失遺伝子の同定が比較的容易なシロイヌナズナT-DNA挿入ライン(Alonso et al. Science 301:653, 2003)(約50,000ライン)を用いた。既報(業績1)に従って、シロイヌナズナ種子を播種した後、NOxチャンバー内で発芽させ、播種後4日目から植物実生を50 ppb 二酸化窒素に曝露、栽培した。曝露開始7~14日目に二酸化窒素存在下で、野生株に比べて胚軸が長い二酸化窒素非感受性個体(株)を選抜した。これまでに約10,000 T-DNA挿入ラインについて選抜を行い、野生株に比べて胚軸長が長い約400個の二酸化窒素非感受性個体(株)を取得した。選抜した個体は、人工気象器内で栽培して自殖種子を採取した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に、植物の二酸化窒素暴露処理に必要なNOxチャンバーの冷凍機などが故障したため修理に時間を要した。そのため当初の予定より遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに取得した二酸化窒素非感受性株の中から真の二酸化窒素センシング遺伝子機能欠失株を選抜する。すなわち、平成27年度に胚軸長を指標としてスクリーニング、取得した二酸化窒素非感受性株を二酸化窒素存在下および非存在下で栽培し、野生株と比較して、二酸化窒素によるバイオマス蓄積促進および花成促進が見られない株(すなわち、真の二酸化窒素センシング遺伝子機能欠失株と考えられる)を取得する。取得された真の二酸化窒素センシング遺伝子機能欠失株のゲノムDNAについて、T-DNA挿入配列を手掛かりとして解析し、二酸化窒素センシング遺伝子の特定を目指す。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に、植物の二酸化窒素暴露処理に必要なNOxチャンバーの冷凍機などが故障したため修理に時間を要し、当初の予定より遅れたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に植物の二酸化窒素暴露処理の実験に使用する。
|
Research Products
(5 results)