2017 Fiscal Year Research-status Report
水田生態系における鳥と捕食性節足動物による天敵効果の評価
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15K07815
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
日野 輝明 名城大学, 農学部, 教授 (80212166)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境保全型農業 / フィブロニド系育苗箱用殺虫剤 / 天敵効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
省力化のために最近使用されるようになったフィブロニド系育苗箱用殺虫剤は、水稲害虫の捕食者であるカエル等の水生生物の個体数の減少をもたらすことが知られている。環境保全型の稲作技術を確立するためには,害虫個体数に対する殺虫剤の効果と天敵の効果、および殺虫剤による天敵個体数への影響を定量に評価することが必要である。本研究の目的は、附属農場の水田において、苗箱用殺虫剤の有無が天敵であるカエル個体数、害虫個体数、水稲収量に及ぼす影響を明らかにすることである。 殺虫剤の施用区では非施用区に比べて、オタマジャクシの成長が遅く、カエル成体の個体数が有意に少なかった。卵からの孵化が遅れたことで中干し前に変態できずに,成体になる前に死亡した可能性が考えられた。しかしながら、殺虫剤施肥の有無によって、ヨコバイ類とウンカ類の害虫個体数に有意な違いは見られなかった。その結果、水稲収量指標である全体重量と500粒重いずれにおいても殺虫剤施肥の有無によって有意な違いは見られなかった。 調査結果から、苗箱用殺虫剤が害虫個体数を減らす直接的効果、天敵を減らすことによって害虫個体数を逆に増やす間接的効果のいずれについても認められなかった。昨年度の調査では殺虫剤施用による害虫個体数減少と水稲収量増加が示され、カエルによる天敵効果が示唆された。今年度はツマグロヨコバイの個体数が多かったことが効果の現れなかった原因であると推測されたことから、害虫個体数の変化に伴う殺虫剤と天敵の効果の違いを継続調査していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年は害虫の個体数が多く,カエルの天敵効果も殺虫剤の効果も害虫個体数の減少と水稲収量に対する効果は認められなかった.しかしながら,これまでの調査でトンボとカエルの天敵効果が害虫が多くない年には有効であること,フィプロニル系殺虫剤がカエル個体数を減少させていることなどが明らかになっている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,殺虫剤の効果に加えて,一次捕食者のクモと二次捕食者のカエルについて,栄養段階の異なる天敵効果を調べることで,カエルがクモを補食することの効果を明らかにする.4年間の結果をまとめて,どのくらいの害虫個体数であれば,天敵効果が有効になるのかを明らかにして,農薬を使用しない環境保全型農業についての提案を行う.
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Causes of Carryover |
消耗品の購入価格が当初予定額よりわずかであるが安価になったことから残額が生じた.351円と少額なので消耗品として処理する.
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