2017 Fiscal Year Research-status Report
温泉発電を活かした持続可能な温泉地の形成に関わる計画論的研究
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15K07829
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
渡辺 貴史 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (50435468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬越 孝道 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (30232888)
小林 寛 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (30533286)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 温泉発電 / 固定価格買取制度 / 運営体制 / 地域住民 / 地域住民の受容性 / 手続き的公正 / 条例 / 温泉地 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題Ⅰの事例分析による運営スキームの解明については,温泉発電の地域住民の受容に資する政策の一つである大分県別府市において2016年3月に制定された「別府市温泉発電等の地域共生を図る条例」の制定経緯と初動期の運用実態を,文献調査およびヒアリングから明らかにした。その結果,本条例の内容とその運用には,地域受容に資する手続き的公正(正当な手続きを経たか否か)を担保できる特徴(例:地域住民に対して事業に関わる情報提供を行っていること,規定違反時の対応規定(改善勧告・公表)を設けていること,事業者と地域住民間において双方向のやり取りがあること等)を持っており,他自治体の類似条例と比べて利害関係者の範囲設定等において手続き的公正を担保し得る可能性が高い内容を持っていることが考察された。 課題Ⅱの温泉発電に適性がある温泉地の評価については,小規模発電の導入可能性を評価する手法の開発に向けて,長崎県雲仙市の小浜温泉において各源泉の現状調査と評価手法の重要な変数の一つである泉源の湧出量,温度,熱量を定時的に観測できるシステムの検討を行った。 本課題の成果を温泉発電に関心を持つ方々に周知し問題共有を図るために,2018年3月18日に長崎県雲仙市の雲仙Eキャンレッジ交流センターにおいて「小浜温泉発電プロジェクト10年のあゆみ」の題のもと,本課題の成果をパネル形式にて一般公開した。 なお,国内のみならず米国における再生可能エネルギー法制の調査を行い,日本への示唆を見出す研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,後述する通り交付申請書に記載された2つの研究の目的に対して,以下の通り一定の成果を上げている,あるいはデータを収集し解析を行っている。そのため本研究の「研究の目的」の達成度は,「おおむね順調に進展している」と判断される。 (1)第一の目的である事例分析による運営スキームの解明については,昨年度の本報告書に記載した事例のうち運営スキームの円滑な運用に資する法制度の運用状況を対象に,ヒアリングを実施し,論文にまとめたこと。 (2)第二の目的である温泉発電に適性がある温泉地の評価については,長崎県雲仙市において小規模発電の導入可能性を評価する重要な変数の一つである泉源の湧出量,温度,熱量を,定時的に観測できるシステムの検討を行っていること。
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Strategy for Future Research Activity |
課題Ⅰである事例分析による運営スキームの解明については,前年度までの成果にもとづき運営スキームの解明を目的としたアンケート票を作成し,温泉発電事業を実施している事業者および事業の許認可を行う立場にある自治体担当者に対するアンケートを実施する。併せてアンケートの補完を目的としたヒアリングも行う予定である。これらの結果からは,温泉発電の地域受容に資する運営スキームを検討する。 課題Ⅱである温泉発電に適性がある温泉地の評価については,多面的機能を評価する指標の検討を継続するともに,重要な変数の一つである泉源の特性を定時的に計測できるシステムの試運転を実施する。 最終年度である平成30年度は,課題Ⅰと課題Ⅱの成果を統合して,温泉発電を活かした持続可能な温泉地の形成に係る方法論を検討する。 なお得られた成果に関しては,関連学会誌(ランドスケープ研究,法学論集,法学研究等)に投稿する。また,本課題の成果を温泉発電に関心を持つ方々に知らせて問題共有を図るために,シンポジウム等の開催を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度に使用する予定の研究費が生じた経緯は,次の通りである。2017年度は,アンケート票作成に必要な情報を十分に収集できなかったため,計画に記載したアンケートの実施には至らなかった。またヒアリングに関しても,日程が上手く調整できなかった等の諸事情から十分な回数のヒアリングを行えなかった。また温泉発電に適性がある温泉地の評価手法については,評価手法こそ検討できたものの,評価手法の実装に向けた取り組み(評価に必要なデータの収集等)が十分に実施できなかった。次年度に使用する予定の研究費分については,前年度に未実施のアンケート実施に係る諸経費,十分な回数を行えなかった温泉地における現地踏査費,論文投稿費,発表する大会等の参加費及び旅費,そして評価手法の実装に向けた取り組みに係る諸経費等に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)