2015 Fiscal Year Research-status Report
抗花粉症薬剤の開発を目指した機能性糖鎖ポリマーの作製と細胞性免疫活性解析
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15K07841
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
前田 恵 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (20434988)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖鎖ポリマー / N-グリカン / 植物抗原性糖鎖 / ハイマンノース型糖鎖 / 動物複合型糖鎖 / スギ花粉症 / Cry j1 / Th2 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物抗原性(植物複合型)糖鎖の骨格構造によるヒトTh2免疫応答の抑制機構を解明するには,糖鎖構造に特異的な免疫応答を明らかにすることが必要になる。そこで本研究では,糖鎖の免疫活性を高めた糖鎖ポリマーを糖鎖構造別に作製し免疫活性解析を行うことを目的とした。本年度は,(1)様々な構造のAsn-糖鎖の精製を行った。具体的には,抽出した糖タンパク質や糖ペプチドに対してアクチナーゼ消化とゲルろ過を繰り返し,親水性クロマトによりAsn-糖鎖を精製した。その結果,イチョウ種子貯蔵タンパク質21 gから植物複合型(M3FX)37 mg,雑豆(大納言)糖タンパク質33 gからハイマンノース型(Man8GlcNAc2)30 mg,卵黄糖ペプチド50 mgから動物複合型(NeuAc2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2)39 mgを精製できた。次いで,(2)糖鎖ポリマー作製方法の改良を行った。糖鎖ポリマーの骨格にはL体で構成される生物分解性ポリマーであるγポリグルタミン酸(γPGA,平均分子量75万)(TOYOBO社製)を用い,Asn-糖鎖のアミノ基を脱水縮合剤DMT-MMによりγPGAのカルボキシル基に共有結合させた。糖鎖ポリマーは,ゲルろ過と逆相HPLCにより精製を行った。γPGAへのAsn-糖鎖の結合率(mol%)は,アミノ酸組成分析によりアスパラギン酸とグルタミン酸のモル比から算出した。その結果,Asn-糖鎖の結合率は植物複合型15.4%,ハイマンノース型8.6%,動物複合型11.1%であった。従って,本手法によりγPGA1分子あたりAsn-糖鎖が植物複合型は890分子,ハイマンノース型は500分子,動物複合型は640分子結合した糖鎖ポリマーを作製することに成功した。また,植物抗原性糖鎖の抗原性低下に関与するα1,3/4フコシダーゼとβガラクトシダーゼの精製を行い論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた糖鎖ポリマーの作製に必要なAsn-糖鎖を3種類(植物複合型,ハイマンノース型,動物複合型)調製することができた。並びに,糖鎖ポリマーの骨格部分と脱水縮合剤を変更することにより,効率的に糖鎖ポリマーを作製することに成功した。今年度は,次年度からの免疫活性測定に用いる糖鎖ポリマーを準備することが出来たため,おおむね順調に進展していると考えられる。一方で,植物抗原性糖鎖の非還元末端がルイスa抗原により修飾された植物複合型Asn-糖鎖は単一構造に分離精製することが難しく,材料やアフィニティークロマトなどを再検討行う必要性が考えられた。リポソームの作製は,糖鎖ポリマー作製方法をそのまま転用できるのか試してみる必要性が考えられた。蛍光ラベル糖鎖ポリマーの作製は,ポリマー骨格部分のアミノ基にFITCを結合させる予定であったが,1箇所のアミノ基へのラベリングではその後の蛍光による検出に支障を来すと予想され,手法を再検討する必要が求められた。
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Strategy for Future Research Activity |
糖鎖ポリマーを作製できたため,今後はヒト末梢血単核球細胞(PBMC)や樹状細胞,マウスマクロファージ等を用いた培養実験を推進し,植物抗原性糖鎖によるTh2応答抑制機構を解明する予定である。ヒトPBMCは結核菌抗原(PPD)で刺激するとTh1型サイトカインであるIFN-γ産生が促進する。またスギ花粉症患者のPBMCはスギ花粉アレルゲンCry j1刺激によりTh2型サイトカインであるIL-4産生が促進する。今後は,種々の糖鎖を多価結合した糖鎖ポリマーが,これらのサイトカイン産生にどのように影響するのか実験により明らかにしていく。また,糖鎖ポリマーが抗原提示細胞あるいはT細胞のいずれに作用しているのか,蛍光ラベル糖鎖ポリマーを用いた蛍光顕微鏡解析も進める予定である。免疫担当細胞上の糖鎖結合タンパク質を同定する必要がある場合には,糖鎖ポリマーを樹脂やビーズに結合させたアフィニティー担体を作製し,細胞抽出液からアフィニティーに結合した目的タンパク質をプロテオーム解析により同定することも考えられる。
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Causes of Carryover |
今年度はAsn-糖鎖の精製と糖鎖ポリマーの作製が主な研究内容になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に計画していた培養実験やその後のELISA測定などに必要な消耗品の購入が次年度の使用計画に変更となった。
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Research Products
(14 results)