2016 Fiscal Year Research-status Report
不斉配位子複合型ニトロキシルラジカル/銅触媒が拓く新規アルコール不斉空気酸化反応
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15K07848
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笹野 裕介 東北大学, 薬学研究科, 助教 (10636400)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルコール酸化反応 / ニトロキシルラジカル / 酸化的速度論的光学分割反応 / 化学選択的酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目である平成28年度は,1年目の結果を踏まえ,不斉配位子複合型ニトロキシルラジカルの触媒構造の更なる最適化を行った.また,基質適用性検討の予備的検討として,酸化反応条件に不安定な硫黄官能基を含むアルコールの化学選択的酸化(これは,不斉反応ではない)についても検討を行った. 触媒構造の最適化については,オキサゾリン環上に様々な嵩高さの置換基を有する不斉配位子複合型ニトロキシルラジカルを合成し,そのラセミ第2級アルコールの酸化的速度論的光学分割反応についての触媒活性を検討した.その結果,1年目で得られた結果(55%変換率,81% ee(s値12)を上回る結果を得ることは出来なかった.そこで,触媒構造中に配位性官能基をさらに組み込んだ不斉配位子複合型ニトロキシルラジカルを設計・合成し,ラセミ第2級アルコールの酸化的速度論的光学分割反応についての触媒活性を検討した.その結果,良好なエナンチオ選択性(49%変換率,90% ee(s値75))で反応が進行する条件を開発することに成功した. 硫黄官能基を含むアルコールの化学選択的酸化については,始めに,1,3-ジチアン構造を含むアルコールを用いて条件最適化を行った.次に得られた最適条件を用いて基質適用性の検討を行った.その結果,5 mol%以下のニトロキシルラジカルを用い,常温・常圧空気という穏和な条件下に種々の含硫黄アルコールが良好な収率で対応するカルボニル化合物へと化学選択的に酸化されることを見出した.検討した基質のうち一部の基質については他の一般的な酸化反応条件(Swern酸化,Dess-Martin酸化など)では目的生成物がほとんど得られないことを確認し,今回開発した条件が有用であることを証明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に掲げた「90% ee以上のキラルアルコールを与える触媒の開発と条件の確立」という目的を達成することが出来た. また,ニトロキシルラジカル/銅触媒を用いるアルコール空気酸化反応が酸化反応条件に不安定な硫黄官能基を許容することを実験的に証明した.
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した研究計画に従い,2年目で確立したラセミ第2級アルコールの酸化的速度論的光学分割反応条件の基質適用性の検証を行う. また,簡単な生物活性化合物の合成を行い,本反応の有用性を実証する.
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Causes of Carryover |
ガラス器具類等の消耗品に係る経費が想定より少なかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費として使用する予定である.
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Research Products
(4 results)