2015 Fiscal Year Research-status Report
動的光学分割による光学活性四置換アレン合成法の開発と天然物創薬研究への応用
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15K07864
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
江木 正浩 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (80363901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 敏幸 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10221904)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アレン / 動的光学分割 / 触媒 / シグマトロピー転位 / プロパルギルアルコール / イナミド / 天然物 / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
アレンは生物活性天然物や医薬品などに多数含まれ、また、高い反応性を示すため合成中間体としても幅広く利用されている。その重要性から、これまでほとんど報告例がない光学活性な四置換アレンの効率的合成に取り組み、光学活性な第三級プロパルギルアルコールとイナミドを原料とする[3,3]-シグマトロピー転位を開発した。 本研究では見出した反応をより実用性の高い方法論にすべく、組み合わせ触媒を用いるラセミ体プロパルギルアルコールから光学活性四置換アレンへの動的光学分割法を開発する。さらに、動的光学分割法を鍵反応に用いて、生物活性を有する天然物raputindole類およびtaiwaniaquinol類の不斉合成研究をそれぞれ行う。 平成27年度の研究では、動的光学分割で用いる触媒の開発とraputindole類の合成ルート構築を行い、以下の成果を得た。 1. 光学分割過程において未反応で残る光学活性なプロパルギルアルコールを、ラセミ化するための触媒開発を行った。多孔質無機化合物メソポーラスシリカの細孔内表面にオキソバナジウムを共有結合で固定化した新規触媒を合成した。細孔径の違いが反応性に影響を与えること、回収再利用が可能であることを明らかにした。 2. プロパルギルアルコールとイナミドの[3,3]-シグマトロピー転位を鍵反応に用いて、インデンとインドールを併せ持つ化合物が合成できることを既に報告している。今回、水酸基のキレーション効果を利用する二重結合の面選択な還元反応を開発し、raputindole Aと同じ立体配置をもつ三環性骨格の構築に成功した。また、保護基の変更により化合物の安定性などが改善され、各反応の収率が向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動的光学分割に関しては、新規ラセミ化触媒の設計・合成を行った。構造や活性など触媒の基礎的知見を得ており、光学活性なプロパルギルアルコールのラセミ化も確認している。光学分割に使用するキラルな銀触媒の合成に取り掛かっており、これからの成果が望まれている。 Raputindole Aの合成ルート確立は、最終工程である側鎖の導入、脱保護を残すのみであり、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの計画を完了するとともに、組み合わせ触媒を用いるラセミ体プロパルギルアルコールから光学活性四置換アレンへの動的光学分割法の開発を重点的に行う。 1. 動的光学分割法の開発:付加 / [3,3]-シグマトロピー転位連続反応を室温で促進するキラルな銀触媒を開発し、ラセミ体プロパルギルアルコールの速度論的光学分割を実現する。ラセミ化触媒と組み合わせて、動的光学分割への展開を図る。 2. 天然物raputindole Aの合成研究:側鎖導入および脱保護を検討し、合成ルートを確立する。また、光学活性なプロパルギルアルコールを用いて、raputindole Aの不斉全合成を達成する。 3. 天然物taiwaniaquinolの合成研究:はじめに、ラセミ体プロパルギルアルコールを用いて、アレン形成を経由した母核構築ならびに合成ルートの確立を行う。
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Causes of Carryover |
研究の効率化を図るため、前倒し支払い請求を活用してフラッシュ自動精製装置を購入した。請求額は10万円からであったため、次年度使用額として残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金は、本来の次年度予算として消耗品購入などに使用する。
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