2015 Fiscal Year Research-status Report
殺原虫活性を有する新規12員環マクロライド天然物の全合成研究
Project/Area Number |
15K07866
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
廣瀬 友靖 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (00370156)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 全合成 / actinoallolide / トリパノソーマ / 新規天然物 |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカトリパノソーマ症はツェツェバエが媒介する寄生性原虫トリパノソーマによって引き起こされる原虫感染症であり、年間感染者数は1840万人以上、死者は1万8千人に及ぶ。本感染症はワクチンによる予防が困難であり、その対策は投薬治療に頼らざるを得ない。しかしながら既存薬には重篤な副作用が確認されており、新規薬剤の開発が望まれている。そのような背景の下、北里生命科学研究所におけるフィジコケミカルスクリーニングの結果、放線菌Actinoallomurus fulvus MK10-036株培養液から新規天然物Actinoallolide類が単離され、これらにin vitro抗トリパノソーマ活性が認められた。 特にActinoallolide A (1)は既存薬に匹敵する強い抗トリパノソーマ活性を示し(IC50 = 4.9 ng/mL)、ヒト胎児肺細胞(MRC-5)に対して高濃度処理においても毒性を示さない(IC50 = > 100 μg/mL)ことから、新規アフリカトリパノソーマ症治療薬として期待がもたれた。一方でin vivo試験においては活性が消失するという事実も判明しており、1の生体内安定性の改善が必須となった。そこで、in vivoにおける高い抗トリパノソーマ活性及び高いヒト安全性を兼ね備えた新規アフリカトリパノソーマ症治療薬創製を最終目的として、1を標的とした多様な類縁体合成が可能な全合成経路の確立に着手することとした。 Actinoallolide類はその絶対立体配置が未決定であったのでこれらの絶対立体配置を決定し、さらにはActinoallolide A をリードとした収束的な合成戦略を立案した。この戦略に基づき、各部分構造の合成を達成した後、全炭素骨格を有する鎖状中間体の合成まで達成できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アクチノアロライドAの構造特徴として12員環ラクトン構造に3置換E-オレフィンを有し、更に不安定な5員環ヘミケタール構造をラクトン環内に持つ。そのヘミケタール構造中の水酸基はラクトンカルボニル及びケトンからβ位に位置するため容易に脱水し、不斉炭素を2つ失った環状エノールエーテル構造(アクチノアロライドC構造)へ変換されると考えられる。また1は環外側鎖に存在する2つの第2級水酸基のうち、ラクトン環近傍水酸基へのトランスラクトン化を起こすことで14員環構造への変換(アクチノアロライドE構造)も考えられる。これら構造的な特徴を考慮して、本研究初年度の達成目標を以下のように定めた:①絶対構造が決定されているアクチノアロライドA(20 mg程所有)からアクチノアロライドB~Eへの化学変換を行うことで、総ての類縁体の絶対構造決定を行う、②アクチノアロライドAを標的にその全合成を達成する。全合成研究では、アクチノアロライドAの収束的な全合成を立案し、最終化合物アクチノアロライドAを3分割したフラグメントを順次連結させる計画を立てた。そして初年度の達成目標は各3種のフラグメントの立体選択的な合成手法の確立と設定していた。 その結果、アクチノアロライドAからの誘導化により絶対構造が未決定であった全類縁体の絶対構造の決定に成功し、更に全合成研究においては当初達成目標と定めた各部分構造の合成を達成できた。さらにそれらフラグメントを用いてそれぞれを連結し、アクチノアロライドAの全炭素骨格を有する鎖状中間体の合成まで達成できた。このため当初の計画以上に進展していると判断し、区分では(1)を選択した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までにアクチノアロライドAの全炭素骨格を有する鎖状中間体の合成まで達成できた。アクチノアロライドの特徴的な骨格として5員環ヘミアセタール構造を含む12員環マクロラクトン部がある。この5員環ヘミアセタールは、前駆体となるβ-ケトエステルが種々の反応条件に対して不安定である事が予想されるため、β-ケトエステル骨格は合成終盤において構築することとし、その前駆体を合成終盤まで安定な構造として存在させておく必要があると考えている。そこでその前駆体として含ベンゼン大環状エーテルを設定し、ベンゼン骨格からβ-ケトエステル骨格を導くこととしている。 今後の研究の推進方策では、本合成戦略において重要な位置を占める大環状エーテルの構築が要となる。大環状エーテルは光延マクロエーテル化により合成する必要があるが、このように高度に官能基化された基質を用いる大環状エーテル合成をしている例は現在までに知られていない。このためこの環化は早い段階で進行を確認しておく必要があると考え、Left part及びCenter partを用いてマクロエーテル化の検討を計画している。このモデル基質による大環状エーテルかの条件を精査した上で、実際の基質である、アクチノアロライドAの全炭素骨格を有する鎖状中間体からその全合成を目指していきたい。そして全合成がルートが確立された後は、全合成で用いた各合成中間体の脱保護体などを各種調製し、その部分フラグメントでの抗トリパノソーマ活性についても調べる予定である。
|
Research Products
(8 results)
-
[Journal Article] Towards the total synthesis of the anti-trypanosomal macrolide, Actinoallolides: construction of a key linear intermediate2016
Author(s)
Jun Oshita, Yoshihiko Noguchi, Akito Watanabe, Goh Sennari, Shogo Sato, Tomoyasu Hirose, Daiki Oikawa, Yuki Inahashi, Masato Iwatsuki, Aki Ishiyama, Satoshi Omura and Toshiaki Sunazuka
-
Journal Title
Tetrahedron Lett.
Volume: 57
Pages: 357-360
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Jietacins with potent nematocidal activity; efficient isolation of novel analogs and divergent total synthesis of jietacin A, B, C, and D2015
Author(s)
Akihiro Sugawara, Masahiko Kubo, Takuji Nakashima, Tomoyasu Hirose, Noriaki Tsunoda, Kyoichi Yahagi, Yukihiro Asami, Takeshi Yamada, Kazuro Shiomi, Yoko Takahashi, Satoshi Omura, Toshiaki Sunazuka
-
Journal Title
Tetrahedron
Volume: 71
Pages: 2149-2157
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Asymmetric Total Synthesis of Indole Alkaloids Containing an Indoline Spiroaminal Framework2015
Author(s)
Takeshi Yamada, Tetsuya Ideguchi-Matsushita, Tomoyasu Hirose, Tatsuya Shirahata, Rei Hokari, Aki Ishiyama, Masato Iwatsuki, Akihiro Sugawara, Yoshinori Kobayashi, Kazuhiko Otoguro, Satoshi Omura, Toshiaki Sunazuka
-
Journal Title
Chemistry - A European Journal
Volume: 21
Pages: 11855-11864
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Creation of Customized Bioactivity within a 14-Membered Macrolide Scaffold: Design, Synthesis, and Biological Evaluation Using a Family-18 Chitinase2015
Author(s)
Akihiro Sugawara, Nobuo Maita, Hiroaki Gouda, Tsuyoshi Yamamoto, Tomoyasu Hirose, Saori Kimura, Yoshifumi Saito, Hayato Nakano, Takako Kasai, Hirofumi Nakano, Kazuro Shiomi, Shuichi Hirono, Takeshi Watanabe, Hisaaki Taniguchi, Satoshi Omura, Toshiaki Sunazuka
-
Journal Title
Journal of Medicinal Chemistry
Volume: 58
Pages: 4984-4997
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-