2015 Fiscal Year Research-status Report
配位子の特性を活かしたパラジウム触媒反応の開発:反応経路のswitching
Project/Area Number |
15K07871
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
加藤 恵介 東邦大学, 薬学部, 教授 (80276609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日下部 太一 東邦大学, 薬学部, 講師 (00600032)
高橋 圭介 東邦大学, 薬学部, 准教授 (60380854)
高山 博之 日本薬科大学, 薬学部, 講師 (60406634)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | パラジウム / カルボニル化 / ビスオキサゾリン / 環化 / 不斉二量化 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、「ビスオキサゾリン (box) リガンドは、2価パラジウムのπ-親和性を高める」というboxリガンドの特性を提唱すると共にこの作業仮説に基づいた新しい反応を開発してきた。この独自のコンセプトに基づいた3つの反応の開発を検討した。 [目的 1-1] アルキン類の水和反応には、水銀や金触媒が有効であることが良く知られているが、有効なパラジウム触媒の例は少ない。安価な 2-アミノエタノールから容易に調製できる、オキサゾリン環 C5位に置換基を持たないboxリガンドとパラジウムの錯体が、アルキンの水和反応に有効であり、特に末端アルキンに対しては広い基質一般性を持つことを見出し、当初の計画通り上述の錯体を用いたアルキンの水和の開発に成功した。 [目的 1-2] 光学活性な3,3'-bibenzothiophene誘導体は、伝導性有機フィルムのような機能性材料としての応用が期待されている。 また、2つのヘテロ環の構築と同時に、軸不斉まで制御してビヘテロ環を一挙に合成する手法は、ほとんど知られていない。オルトアルキニルフェニルメトキシメチルスルフィドを box-パラジウム触媒と処理することで、環化‐二量化反応が進行し最高90% eeの3,3'-bibenzo-thiophene 類を70%の収率で得ることに成功した。 [目的 2] 同じ触媒を用いても配位子を変えるだけで、生成物を作り分けることを目的とし、アルキニックヒドラゾンおよびオルトアルキニルアニリンのカルボニル化反応を検討した。以前の研究において、boxを配位子として用いると2つのヘテロ環を有するケトンが得られることを報告しているが、今回、同様の反応条件においてDMSOを配位子とすることでヘテロ環-3-カルボキシレートが得られることを見出した。すなわち、ピラゾール環形成反応とインドール環形成反応において、配位子による反応経路のswitching に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度計画していた2つの研究テーマのうち[目的 1-1. Box-パラジウム錯体によるアルキンの水和反応の開発]は、予定通り達成された。2つ目のテーマである[目的 1-2. Box-パラジウム錯体による不斉環化二量化反応:3,3'-bibenzothiophene のエナンチオ選択的な新規合成法の開発]は、予定通り良好に進行しているが完成には至らなかった。その代わりに、28年度予定していた研究テーマの1つである[目的 2. リガンドの特性を活かした反応のswitching]について検討した。その結果、28年度に予定していた半分について、目的を達成した。当初の研究計画に対して、一部順序が変わっているものの本質的になんら変更は無く、極めて順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度に予定していたテーマのうち完成に至らなかった[目的 1-2. Box-パラジウム錯体による不斉環化二量化反応:3,3'-bibenzothiophene のエナンチオ選択的な新規合成法の開発]について、28年度も引き続き検討する。また、[目的 2.リガンドの特性を活かした反応のswitching]に関して、アルキニックヒドラゾンおよびオルトアルキニルアニリンを基質とする反応はすでに完成している。そこで28年度は、アレニルケトンおよびアルキニルヒドロキシルアミンを基質とした反応を検討していく。 さらに28年度以降は、[目的3.酸素を最終酸化剤としたグリーンな反応への展開]や[目的4.アノメリック位のパラデーションを起点とするC-グリコシドの新規合成法の開発]を検討していく。結論として、当初の研究計画に対して、一部順序が変わっているものの本質的になんら変更は無い。
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Causes of Carryover |
27年度は研究する大学院生が少なく、消耗品費の使用が少なかったため。しかし、研究の進行には支障をきたしていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は研究する大学院生が増えるため、消耗品費の増加が見込まれる。また低温反応措置の使用者が増加するため、満足に反応を行えなくなることが予想される。そこでスムーズに研究を進行させるのに必要な低温反応措置の購入を考えているが、まだ機種の決定には至っていない。
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Research Products
(12 results)