2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K07881
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
末田 拓也 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (40260682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳田 玲子 広島国際大学, 薬学部, 教授 (80239821)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アレニミド / アレナミド / イニミド / イナミド / ヘテロ環 |
Outline of Annual Research Achievements |
イニミドのアレニミドへの異性化反応の開発: 申請時の予試験から,イニミドのアレニミドへの異性化反応には, σ及びπ-ルイス酸性を有する金属塩で,さらにその 対アニオンが塩基性を持つことが重要であると考えていた。実際に種々の金属塩を用いて精査した結果,メシチレン溶媒中でイニミドに触媒量または化学量論量のフッ化銀を作用させると最も効率よくアレニミドが得られることを見出した。また本反応には加熱を要するが,オイルバスによる単純な加熱ではほとんど反応が進行せず,マイクロ波の照射やQ-Tube Pressure tube reactorを用いる条件が必要であることが判明し,特に後者を用いると,簡便かつ安全に,満足できる収率でアレニミドが得られた。この条件下に種々のN-アルキニルフタルイミドを用いて,内部アレン型アレニミドの合成法を確立することに成功した。なおフタルイミド以外に,サクシンイミドやマレイミド誘導体でも,低収率ながら本合成法が適用できることも見出している。 末端アレン型のアレナミドやアレニミドの合成法としてよく知られているプロパルギルアミド及びイミドの塩基による異性化を,内部アレン型アレニミドの合成に適用して種々検討したが,目的とする反応は全く進行せず,ほとんどの場合において原料のプロパルギルイミドが回収されたこ。その詳細な理由については現在のところまだ調査中ではあるが,今回開発したイニミドのアレニミドへの異性化反応は極めて独創的で,かつ有機合成化学において大変有意義なものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにその合成方法が全く報告されていないフタルイミドを基盤とする内部アレン型のアレニミドの合成を,我々が世界で初めて合成に成功したN-アルキニルフタルイミドを用いて,その異性化反応によって成し遂げることができた。 本研究課題では,これまでにほとんど知られていないアレニミドの反応性を調査し,有機合成反応への応用の基盤を構築する事も目的としており,本年度に開発した合成法から得られる種々のアレニミドを用いて,今後,その反応性を精査することが可能となった。なお,本異性化反応の条件検討中に,N-アルキニルフタルイミドからN-アルキニル 3-アルキル-3-ヒドロキシイソインドリンが単離され,さらにそれらがCuCl存在下にオキサゾールへ効率よく異性化することも見出している。 一方,異性化反応の推進力の解明を分子軌道計算を用いて検討したが,中間体と予想される種々のカルバニオンにおいてその安定構造が得られず,現在も検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに最もよく研究されているN-アルキニルアミン類はアレナミドである。しかし,アレナミドは窒素原子に結合したカルボニル基の反応性が低いため,それを反応に利用した例はほとんどなく,ほぼすべての反応がアルキニル基に限定されている。一方我々のこれまでの研究から,窒素原子にカルボニル基を2つ有するイニミドは,そのカルボニル基とアルキニル基を余すことなく反応に利用できることが判明している。特にフタルイミド骨格は,ヒドラジンなどの求核剤によりフリーのアミノ基に容易に変換可能であり,アレナミドが3級のアルキニルアミン等価体として利用されるのに対し,イニミドは1級アルキニルアミン等価体として利用できる。 アレニミドもまた,イニミドと同様の化学的性質を有すると予想している。アレナミドと同じ位置選択的なアレニル基の反応性と,カルボニル基の高い求電子性を積極的に組み合わせることで,アレニミドに特徴的な反応を見出すことを目指す。 一方,イニミドとアレニミドの反応性の違いにも言及したい。窒素原子のローンペアがそれぞれの化合物において分子内でどのように関与しているか,分子軌道計算を用いて精査する。特に電子密度分布を考慮しつつ,アレニミドに特徴的な反応の開発に利用する。
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Causes of Carryover |
予想以上に反応の条件検討が計画通りに進行したため,イニミドの合成原料である末端アルキン,及びヘキサン・酢酸エチル・ジクロロメタンといった有機溶媒に関して,研究室の在庫で当該年度はほぼ十分であったため,これらの購入を抑えることができた。 また次年度以降,アレニミドを活用する新規反応の開発を検討する際に,比較的高額な低温での反応装置が必要になる可能性があり,その装置の次年度購入も視野に入れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に購入しなかったイニミドの合成原料である末端アルキンなどの試薬,及びヘキサン・酢酸エチル・ジクロロメタンといった有機溶媒のほとんどは,既に在庫がない。次年度の開始と共にこれらの試薬・溶媒を購入する。またアレニミドを活用する新規反応の開発を検討する際に多様の試薬や低温の反応装置が必要になることが予想され,それらの購入に使用する。
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Research Products
(6 results)