2015 Fiscal Year Research-status Report
高選択的な局所化学療法を目指した肝臓表面適用二層型シート製剤の開発
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15K07891
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西田 孝洋 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (20237704)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 代謝阻害剤 / がん / 放出制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
病巣部位選択的な薬物送達を目的とした肝臓表面への直接投与という新規の薬物投与経路を提案してきた。肝臓表面投与法の製剤化に向け、片面からの薬物放出を可能にする二層型シート製剤を設計し、5-FU含有二層型シート製剤をラット肝臓表面に貼付し、シート製剤からの5-FU放出性および薬物動態を評価した。poly (lactic-co-glycolic acid)、hydroxypropyl cellulose (HPC)、5-FUをacetoneに溶解し、溶媒を除去することでHPC封入率の異なる(0, 2, 10%) 3種類の5-FU含有シート製剤を作製した。さらに、PLGAとHPCのみでシート製剤を作製し、5-FU含有シート製剤と重ね合わせることで、5-FU含有二層型シート製剤とした。作製したシート製剤を肝臓表面に貼付し、一定期間飼育した。4, 14, 28日経過後、開腹し、シート製剤の回収および肝臓の摘出を行った。摘出した肝臓は二層型シート製剤直下であるsite 1、site 1以外の外側左葉であるsite 2、その他の葉であるsite 3に分け、肝ホモジネートを調製した。5-FU含有二層型シート製剤による肝臓表面投与を行った結果、28日間に渡り5-FUを持続的に放出し、肝臓中5-FU濃度を維持することに成功した。28日間における5-FU放出率では、HPC 0%封入したシート製剤と比較し、HPC 2, 10%封入したシート製剤で上昇する傾向が見られた。そして5-FUの肝臓中濃度はHPC 2%を封入したシート製剤で、site 1の濃度が選択的に上昇する傾向が見られた。以上の結果は、肝臓表面投与法の臨床応用に向け、重要な知見であり、今後、5-FUの代謝分解を抑制するgimeracilを含有させた二層型シート製剤の5-FU放出速度の最適化および腫瘍モデル動物への抗腫瘍効果を評価していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の大きな目的である、抗癌薬を封入した均一な形状の徐放化に優れた、片面からの薬物放出を可能にする二層型シート製剤の作製およびその肝臓内動態の評価については、予定通り達成できた。しかしながら、5-FUの代謝分解を抑制するgimeracilのシート製剤への添加については、高分子添加物の種類や組成といった製剤処方の最適化に、当初予定していた以上の時間を費やした。また、肝癌モデル動物の作製に着手したものの、肝臓内の特定部位に癌を作製するための、癌細胞の播種数や投与方法などの予備的検討にやや時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
均一な形状の片面からの薬物放出を可能にする5-FU含有二層型シート製剤の作製方法を確立し、その肝臓内動態を検討し、腹腔内における局所送達性に優れるDDS製剤であることを確認することができた。しかしながら、5-FUの肝臓内濃度をさらに高めるために、5-FUの代謝分解を抑制する代謝阻害剤の添加が有効であるため、代謝阻害剤を含有させた二層型シート製剤の最適な製剤処方を検討する。作製した二層型シート製剤の腹腔内でのシート製剤自体の安定性、付着性、および臓器傷害性を十分に調べ、腹腔内での適切な滞留性が得られる添加剤濃度を決定する。このような代謝阻害剤含有二層型シート製剤の最適化が完了次第、肝癌モデル動物における二層型シート製剤の薬物吸収・分布実験、および二層型シート製剤の肝臓表面における有効性を評価する準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
本来は次年度(平成28年度)に開始予定だった肝癌モデル動物における二層型シート製剤の肝臓内動態および効果を予備的に検証するために、平成28年度の予算を一部前倒しした。しかしながら、肝癌モデル動物作製の準備を開始したものの、肝臓内の局所への癌移植のための基礎的な条件設定に想定以上の時間を要し、一部前倒しした予算と実際の実験動物の購入金額にやや差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
肝臓表面適用二層型シート製剤作製のための抗癌薬(5-FU)、代謝分解阻害薬、高分子添加剤(PLGA, HPC)、および肝機能診断薬(AST, ALT測定キット)などの薬品類を購入する。その他、抗癌薬などの定量用のガラス・プラスチック器具の購入を予定している。一方、肝臓表面適用二層型シート製剤の大部分の評価をin vivo系で行うこと、実験的病態モデル動物(マウス)を作製することから、実験用動物の購入に多額の経費を見込んでいる。さらに、DDS、薬物動態、薬物治療に関する学会に参加し、製剤設計やがん化学療法に関する最新の研究成果の情報収集および成果発表のための旅費を見込んでいる。
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