2016 Fiscal Year Research-status Report
高選択的な局所化学療法を目指した肝臓表面適用二層型シート製剤の開発
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15K07891
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西田 孝洋 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (20237704)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗癌薬 / 徐放化製剤 / 肝臓内動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓表面投与法の製剤化に向け、本年度では、局所化学療法を目指した担癌マウスの肝臓表面へ適用可能な抗癌薬5-Fluorouracil(5-FU)含有シート製剤(以下、シート製剤)を作製し、シート製剤適用時の5-FU肝内分布を正常マウスの結果と比較した。シート製剤の作製では、poly (lactic-co-glycolic acid)(PLGA)と5-FUをacetoneに溶解後風乾し、acetoneを留去した。乾燥後、直径12 mmの半円に切り取りPLGAのみのシートと重ね合わせ、5-FU含有量の異なる6種類のシート製剤を作製した。担癌マウスの作製では、Hepa1-6細胞(マウス肝癌由来細胞株)をC57BL/6Jマウスの肝臓に接種し、1週間飼育した。5-FU肝内分布の評価では、シート製剤を正常マウスの肝臓表面あるいは担癌マウスの腫瘍表面に貼付した。貼付1週間後の5-FUの肝内濃度および血漿中濃度をHPLC-UV(266 nm)により定量した。シート製剤を5-FU/PLGA比が0.11以下で作製可能であった。5-FUのシート製剤からの放出プロファイルを速度論的に解析したところHiguchi式に従い、マトリックス型製剤であることが示唆された。5-FU肝内分布を評価したところ、正常マウスおよび担癌マウスのいずれにおいても、シート製剤適用部位に5-FUが集積し、血漿中への5-FUの移行も抑制できた。さらに、正常マウスと比較して、担癌マウスのシート製剤適用部位における5-FU濃度は12倍高くなった。以上の結果より、肝臓表面へ適用可能なシート製剤を用いて病巣部位局所的に抗癌薬を送達できる可能性が示された。今後、5-FUの代謝分解を抑制するgimeracilを含有させた二層型シート製剤の5-FU放出速度の最適化および腫瘍モデル動物への抗腫瘍効果を評価していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の大きな目的である、マウスの肝臓表面へ適用可能な、抗癌薬を封入した均一な形状の徐放化に優れた、片面からの薬物放出を可能にする二層型シート製剤の作製、および担癌モデル動物における肝臓内動態の評価については、予定通り達成できた。しかしながら、担癌モデル動物作製、特に腫瘍細胞の播種条件の最適化に、当初予定していた以上の時間を費やした。また安定して、肝臓内の特定部位に癌を作製し、シート製剤の効果を判定する条件確立の予備的検討にやや時間を要している。例数が非常に少ない予備的な検証結果として、シート製剤の抗腫瘍効果が認められたが、抗癌薬のシート製剤への含有量を上げたり、分解酵素阻害薬を併用したりする工夫が必要であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
均一な形状の片面からの薬物放出を可能にする抗癌薬5-FU含有二層型シート製剤の作製方法を確立し、その担癌モデルマウスにおける肝臓内動態を検討し、腹腔内における局所送達性に優れるDDS製剤であることを確認することができた。予備的検討結果として、シート製剤の抗腫瘍効果も得ることが出来た。しかしながら、5-FUの肝臓内濃度をさらに高めるために、5-FUの代謝分解を抑制する代謝阻害剤の添加が有効であるため、代謝阻害剤を含有させた二層型シート製剤の最適な製剤処方を検討する。腹腔内での適切な滞留性が得られる添加剤を製剤作製の処方に加えることも検討する。あるいは、他の抗癌薬の候補として、ドキソルビシンを含有した二層型シート製剤の作製の準備も進めていく。一方、シート製剤の抗腫瘍効果および安全性を厳密に評価するための実験系の確立を早急に行う。
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Causes of Carryover |
肝癌モデル動物を用いた検討を開始したものの、肝臓内の局所への癌移植のための基礎的な安定した条件設定に想定以上の時間を要し、効果判定のための動物実験が予備的検証にとどまってしまったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
シート製剤作製のための抗癌薬(5-FU、ドキソルビシン)、代謝分解阻害薬、高分子添加剤(PLGA, HPC)、および肝機能診断薬(AST, ALT測定キット)などの薬品類を購入する。その他、抗癌薬などの定量用のガラス・プラスチック器具の購入を予定している。一方、シート製剤の大部分の評価をin vivo系で行うこと、実験的担癌モデル動物(マウス)を作製することから、実験用動物の購入に多額の経費を見込んでいる。さらに、DDS、薬物動態、薬物治療に関する学会に参加し、製剤設計やがん化学療法に関する最新の研究成果の情報収集および成果発表のための旅費を見込んでいる。
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