2016 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍微小環境応答性ペプチド搭載核酸キャリアーの開発と肝転移がん治療への展開
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15K07907
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
濱 進 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (60438041)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 腫瘍微小環境 / DDS / 腫瘍内透過 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、腫瘍微小環境を利用して、肝転移がんに対する革新的な治療法を開発するために、高い血管・組織透過性を示すだけでなく、腫瘍環境に鋭敏に応答し、がん細胞内へ効率的に核酸医薬を送達し最大限の機能を発揮する核酸キャリアーを開発することを目的としている。開発するキャリアーは、高い血管・組織透過性と腫瘍低pHに応答した細胞内取り込み促進効果を併せ持つペプチド(CTR-SAPSP)とキャリアーからの核酸医薬の放出を促進可能なペプチド(SAPSPおよびSAMP)を搭載したリポソーム型キャリアーであり、腫瘍微小環境を抑制可能な機能性核酸を内封することで、転移がんの細胞内にfree型の核酸を送達可能なだけでなく、高い抗腫瘍効果も期待できると考えられる。 2016年度は、2015年度に構築した、組織透過性と腫瘍環境応答性を併せ持つリポソーム型キャリアーCTR-SAPSPを修飾させたリポソーム(CTR-SAPSP-lipo)のスフェロイド透過性を評価した結果、オリジナルSAPSPに比べて高いスフェロイド透過性を有することが示唆された。現在、in vivoにおける組織透過性を評価している。 また、2015年度に開発した標的のがん細胞質内で効率的に核酸を放出可能なキャリアーのin vivoにおける機能性を評価した。その結果、本キャリアー内にsmall interfering RNA (siRNA) を封入した場合、従来のキャリアーに比べて、高い遺伝子発現抑制効果を示した。 今後、CTR-SAPSP-lipo内に抗腫瘍核酸を封入し、in vivo抗腫瘍効果を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、組織透過性かつ腫瘍環境応答性を併せ持つことが期待されるリポソーム型キャリアーのスフェロイド透過性評価と内封する核酸コアのin vivo 機能性評価を中心に研究を進めた。腫瘍微弱低pH応答性ペプチドSAPSPのC末端に組織透過性配列を連結させたCTR-SAPSPを修飾したリポソームCTR-SAPSP-lipoは、SAPSPあるいはCTRを修飾したリポソームに比べて、スフェロイド深部まで送達されることが明らかとなった。SAPSP単独をリポソームに修飾した場合、アクチンの脱重合を介して、腫瘍内透過性を示すが、CTR-SAPSP-lipoの場合、CTRの受容体であるNeuropilin-1の阻害剤によって、スフェロイド透過が一部抑制された。このCTR-SAPSP-lipoは、オリジナルSAPSPと同様、腫瘍低pH応答性を有しており、また複数のメカニズムを介して腫瘍内透過促進が期待できる新規キャリアーであると考えられる。 また、2015年度にキャリアーに内封する核酸コアとして、微弱低pH応答性ペプチドSAPSPとsiRNAの凝縮体(SAPSPコア)を構築し、in vitroにおいて、細胞質pHに応答して速やかにsiRNAを放出することで、高い遺伝子発現抑制効果を示すことを確認した。2016年度は、細胞透過性ペプチドであるオクタアルギニンR8を修飾したリポソーム内にSAPSPコアを封入し、in vivo での機能性を評価した。担癌マウスに構築したキャリアーを腫瘍内あるいは静脈内投与した結果、いずれの投与経路においても、遺伝子発現抑制効果が認められた。 当初の計画通り、2年間で、組織透過性と腫瘍環境応答性を併せ持つリポソーム型核酸キャリアーを構築できたことから、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の研究において、組織透過性と腫瘍環境応答性を併せ持つ核酸キャリアーを構築したが、本キャリアーが実際に肝臓に転移したがん細胞に特異的送達されるのかを十分に評価できていない。そのため本研究課題を推進するために、担癌マウスおよび転移モデルマウスに蛍光標識したCTR-SAPSP-lipoを投与し、一定時間後に摘出した腫瘍および肝臓の組織切片を共焦点レーザー顕微鏡で観察することで、肝臓の転移部位へのCTR-SAPSP-lipoの送達を評価する。また、in vivo抗腫瘍効果を検討する必要があるが、すでに内封する抗腫瘍核酸を選定済みであり、抗腫瘍核酸のin vitroにおける遺伝子発現抑制効果および細胞死誘導効果を評価した後、抗腫瘍核酸を封入したCTR-SAPSP-lipo投与による腫瘍成長抑制効果を検討する予定である。
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Research Products
(9 results)