2015 Fiscal Year Research-status Report
リポタンパク質受容体を介したリポソームの細胞内動態の分子メカニズム
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15K07915
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
加藤 くみ子 国立医薬品食品衛生研究所, 薬品部, 室長 (10398901)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リポソーム / リポタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
HepG2細胞を用い、PEG修飾リポソームと低比重リポタンパク質(LDL)受容体との相互作用、細胞内取り込みを解析するために、本年度は以下の実験を行った。PEG修飾脂質、コレステロール及び中性脂質から成るサイズ約100nmのリポソームを調製し、サイズ・ゼータ電位等の物理的化学的特性解析を行った。細胞にはLDL受容体が最も多く存在し、また肝実質細胞のモデルとして汎用されているHepG2細胞を用いた。培養した細胞についてLDL受容体の発現をwestern blottingにより確認した。さらに、阻害剤を用いた実験から本研究で作製した蛍光標識PEG修飾リポソームは、主としてクラスリン介在性エンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれることが示唆された。そこで、PEG修飾リポソームの細胞内取り込みに及ぼすLDL受容体の関与を調べるために、中和抗体として抗LDL受容体抗体を細胞に添加し、4度で1時間インキュベーションした。同時に中和抗体による前処理を行わないコントロール群を用意した。洗浄後、蛍光標識PEG修飾リポソームを加え、PEG修飾リポソームの細胞内取り込み量を、脂質に標識した蛍光色素の強度により評価したところ、コントロール群と比較し取り込み量が抑えられていた。本結果は、本研究で用いたPEG修飾リポソームのHepG2細胞への取り込みにLDL受容体が関与していることを示唆するものである。また、培地中のFBSを取り除くとPEG修飾リポソームの取り込みが減弱することが確認された。次年度は、PEG修飾リポソームのHepG2細胞への取り込みに関与している因子について、さらに詳細な検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、HepG2細胞を用い、PEG修飾リポソームとリポタンパク質受容体との相互作用、細胞内取り込みに焦点を当て、PEG修飾リポソームの細胞内動態の分子メカニズムをより詳細に解析することである。本年度は、まず、本研究で用いるPEG修飾リポソームの作製やHepG2細胞培養系の準備を行い、実験系の妥当性を確認した。具体的には、用いたHepG2細胞にLDL受容体が発現することを確認し、また作製したPEG修飾リポソームが、主としてクラスリン介在性のエンドサイトーシスにより取り込まれることを確認することができた。更に、PEG修飾リポソームの細胞への取り込みにLDL受容体が関与していることが、LDL受容体に対する中和抗体を用いた実験から示唆され、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
PEG修飾リポソームのHepG2細胞への取り込みにLDL受容体が関与することが示唆されたことから、LDL受容体の関与について、より詳細な検討を進める。また、PEG修飾リポソームのHepG2細胞への取り込みにおける、LDL受容体以外の生体内因子の関与に関して精査する。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究費をほぼ計画通り使用できたが、実験系の妥当性確認をより詳細に行うことが重要であったため、次年度に使用する研究費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、主にリポソームの構成脂質など試薬の購入費として使用する予定である。
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