2015 Fiscal Year Research-status Report
リゾホスファチジルセリンを介したがん細胞免疫回避機構の解明
Project/Area Number |
15K07919
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
巻出 久美子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30519773)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リゾリン脂質メディエーター / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は担がんモデルマウスを用いて腫瘍部におけるLysoPS産生およびLysoPS関連分子の発現解析を行った。肺がんLL/2細胞およびメラノーマB16-F10細胞をC57BL/6マウスに皮下移植し、経時的に腫瘍部におけるLysoPS量をLC-MS/MSを用いて測定した結果、どちらの腫瘍部においてもLysoPSが豊富に存在することがわかった。また、がん細胞により産生されやすいLysoPSの分子種が異なり、LL/2細胞担がん時には飽和LysoPSが、B16-F10細胞担がん時には不飽和LysoPSがより産生された。また、LL/2細胞担がん時の腫瘍部におけるLysoPS受容体の発現を定量PCRにより解析した結果、LPS1-3のいずれも移植前に比べて顕著に発現が上昇していた。磁気細胞分離により、腫瘍部の白血球、さらにT細胞画分に分画したところ、LPS2とLPS3はほぼT細胞画分に限局して高発現していることがわかった。これらの結果より、腫瘍部において産生されたLysoPSが、LPS2およびLPS3を発現したT細胞に作用しうるものと考えられる。さらに、LysoPS受容体KOマウスにLL/2細胞を担がんし、腫瘍形成を評価した結果、LPS1 KOマウスは野生型とほぼ同様の腫瘍形成であったのに対し、LPS2 KOマウス、LPS3 KOマウスにおいて腫瘍形成が抑制される傾向にあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度計画されていた項目はほぼ全て実施し、結果を得ている。また、期待通り腫瘍部にはLysoPS産生が認められること、およびLysoPS受容体を発現した白血球が浸潤していることから、LysoPSシステムは腫瘍免疫において何らかの機能を有していることが示唆される。受容体KOマウスの担がんモデルにおいては、大きな差は認められなかったが、受容体の重複性という観点から想定内の結果であり、当初の計画通り受容体の多重欠損マウスの評価を進めていく予定である。受容体多重欠損マウスについては、当初予定よりも早く進捗しており、既に作出に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、LysoPS受容体のうち特にLPS2とLPS3は重複した機能を有していることが予想される。よって、LysoPS-LysoPS受容体の役割をより見やすくするために、多重欠損マウスにおける腫瘍形成の評価を行っていく。また、LPS2, LPS3は腫瘍部ではT細胞に限局した発現をすることが明らかとなり、受容体機能をより簡潔に評価することを目的に、新たにOT-1, OT-2マウスを導入し、受容体KOマウスとの交配を進め、OVA発現腫瘍担がんモデルマウスに受容体欠損T細胞を移植することにより、T細胞上のLysoPS受容体の役割を明らかにする。さらに、in vitroにおいて細胞傷害性アッセイにおいて細胞レベルでの解析を進めていく予定である。
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