2016 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌特異的糖転移酵素の機能と転写制御の解明による新規薬剤スクリーニング系の構築
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15K07924
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 武史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (30291131)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 癌 / 糖転移酵素 / 転写制御 / センサー細胞 / 薬剤スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に樹立したβ4GalT4遺伝子の発現を高めた大腸癌細胞を用いて、癌細胞の悪性形質を、足場非依存的増殖能を評価するソフトアガーアッセイや癌幹細胞性を評価するスフェロイドアッセイにより解析した。その結果、いずれのアッセイでも対照細胞とβ4GalT4遺伝子高発現細胞との間で悪性形質に変化は見られなかった。糖鎖修飾の変化が軽微であったこと考え併せると、遺伝子発現が2倍程度高いだけでは悪性形質に影響を与えない可能性が考えられた。次に、β4GalT4遺伝子の転写を制御する転写因子をゲルシフトアッセイとChIPアッセイにより解析した。しかし、β4GalT4遺伝子のプロモーター配列の特徴からか、いずれのアッセイでも明瞭な結果が得られなかった。そこで、大腸癌との関連が報告されている転写因子Sp1とRunx1に着目して、さらに解析を進めた。同定したβ4GalT4遺伝子のプロモーター領域に存在する1カ所のSp1結合部位に変異を導入すると、プロモーター活性が著しく低下した。一方、Sp1やRunx1を遺伝子導入すると、プロモーター活性が有意に増加することが判明した。従って、Sp1やRunxはβ4GalT4遺伝子の転写を正に制御する転写因子であると考えられる。さらに、β4GalT4遺伝子の転写制御配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流に繋いだプラスミドを、大腸癌細胞に恒常的に導入しセンサー細胞を樹立した。この細胞にSp1のDNAへの結合を阻害するmithramycin Aを添加すると、薬剤濃度依存的にプロモーター活性は著しく低下した。これらの結果から、樹立した細胞はβ4GalT4遺伝子の転写を抑制する薬剤のスクリーニングに有用であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は大腸癌細胞におけるβ4GalT4の機能解析の一環として、悪性形質に及ぼす影響の解析を試みたが明確な結論は得られなかった。一方、ヒトβ4GalT4遺伝子の転写制御機構について解析し、この遺伝子は転写因子Sp1やRunx1によって転写が正に制御されていることを見出した。さらに、β4GalT4遺伝子の転写制御配列をもつセンサー細胞を大腸癌細胞で樹立した。Sp1のDNAへの結合を阻害する薬剤をモデル化合物に用いて、構築したシステムにおける細胞のプロモーター活性の薬剤応答性を評価し、このシステムが薬剤スクリーニングに有用であることを明らかにした。また、大腸癌幹細胞からもセンサー細胞を樹立するため、大腸癌細胞から大腸癌幹細胞の調製を試みた。以上の研究成果から、次年度の研究につながる研究基盤を確立したので、おおむね順調に達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
β4GalT4の大腸癌細胞における機能解析に関して、使用したものとは違う発現ベクターを用いてβ4GalT4遺伝子の発現をより高めた細胞を樹立して検討する。また、転写因子Sp1やRunx1によるβ4GalT4遺伝子の転写制御のメカニズムを詳細に解析する。一方、構築した薬剤スクリーニングシステムを用いて、化合物ライブラリーからβ4GalT4遺伝子の発現を抑制する薬剤を探索する。その後、スクリーニングにより得られた候補薬剤で大腸癌細胞を処理し、悪性形質の解析を試みる。さらに、薬剤スクリーニングをより簡便且つハイスループット化する観点から、構築した薬剤スクリーニングシステムを改良できるかどうかを検討する。大腸癌幹細胞からもセンサー細胞を樹立し、同様の実験を行う。
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Causes of Carryover |
実験効率の向上を図ったことにより、当初に使用を予定していた研究費を一部使用することなく、平成28年度の研究実施計画をおおむね達成できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
幾つかの研究実施計画は平成28年度から継続しているため、翌年度以降に請求する研究費と合わせて使用する。
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Research Products
(2 results)