2015 Fiscal Year Research-status Report
組織標的性を持つ遺伝子導入ベクターとしての次世代バキュロウイルスの開発
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15K07926
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田村 隆彦 金沢大学, 薬学系, 助教 (00434035)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バキュロウイルスベクター / マラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では出芽型組換えバキュロウイルスベクター(BV)に注目した。肝臓標的性を持たせる分子としてマラリア原虫スポロゾイトの表面タンパク質であるCSP ならびにTRAP に注目した。CSP やTRAP は肝細胞と結合する能力があり、マラリアスポロゾイトの肝臓への感染に大きく寄与する。CSP あるいはTRAP をBV表面に発現させたBVを作製し(CSP-BV, TRAP-BV)、精製したBVにおける発現をウエスタンブロッティングや電子顕微鏡において確認した。HepG2 細胞、Huh7細胞(ヒト肝癌細胞株)において遺伝子導入効率が数十倍上昇することを明らかにした。さらに、ヒト初代肝細胞であるPXB細胞においても顕著な遺伝子導入の上昇が確認できた。またマウスにCSP-BVを注入すると肝臓での遺伝子導入効率が飛躍的に上昇することを明らかにした。CSP-BVはコントロールBVと比べてHepG2細胞への結合はわずかに上昇したが、むしろ核内への取り込みが大きく上昇することが明らかになった。
CSP やTRAP に見るようにマラリア原虫には標的化に適した分子が多く存在することに着目した。例えば、マラリア原虫に感染した赤血球は脳や肺、胎盤、脂肪組織などの創薬研究に重要な組織に付着、集積することが知られている。胎盤ではマラリア感染赤血球がsyncytiotrophoblast に接着するが、マラリア原虫のPfEMP1var2CSA 分子が重要であることが既に明らかになっており、BV のsyncytiotrophoblast への標的化に用いることで、胎盤でのトランスポーターの機能解析などへの応用が可能である。var2CSA遺伝子を発現するBV(var2CSA-BV)を作製し、精製したBVにおける発現をウエスタンブロッティングで確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CSP-BV, TRAP-BVでヒト肝細胞での遺伝子導入上昇を確認できた。また査読付き国際誌に研究成果を発表できた。var2CSA-BVの作製はvar2CSAが大きな分子のため、難航したが、最終的に作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
BVをin vitroのみならずin vivoでの使用を想定すると、補体によるBVの失活に対する対策が必要である。そのために補体制御分子(CD46, CD55, CD59)を発現するBVを作製し、補体抵抗性を評価する。
var2CSA-BVについてはBewo細胞などのtrophoblast細胞での遺伝子導入効率を評価する。
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