2015 Fiscal Year Research-status Report
男性不妊と肥満の原因となるRabL2-Cep19複合体の機能解析
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15K07929
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 洋平 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (90568172)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 繊毛 / 鞭毛 / 中心体 / 基底小体 / 低分子量GTPase |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 生化学的、細胞生物学的解析: RabL2、Cep19、FOPが3者複合体を形成しているかを共免疫沈降法を用いて調べ、これらのタンパク質はRabL2-Cep19-FOPというリニアな形で相互作用していることが判明した。次に、これらのタンパク質の細胞内局在を蛍光顕微鏡を用いて観察した。その結果、FOPがCep19を中心体にリクルートし、次にCep19がRabL2をリクルートする、というタンパク質間相互作用カスケードによって中心体への局在が規定されることがわかった。 CRISPR/CAS9システムを用いてCep19をKOしたRPE1細胞を樹立した。Cep19 KO細胞では、一次繊毛の形成率が約80%から40%まで減少することを見出した。次にEGFP-Cep19を用いたレスキュー実験を行ったところ、繊毛形成率が野生型のものと同程度まで回復した。この結果からRPE1細胞において、一次繊毛の形成にCep19は必須ではないが、正常な繊毛形成率の維持には必要であることが判明した。 (2) クラミドモナスを用いた解析: クラミドモナスのRabL2とCep19のホモログ遺伝子をクローニングし、これらが結合することを見出した。RabL2-Cep19複合体はクラミドモナスからヒトまで進化的に保存されていると考えられる。 (3) ゼブラフィッシュを用いた解析: Cep19変異体(ドミナントネガティブ体)を発現させたトランスジェニックゼブラフィッシュを作製した。性成熟したオスから精子を採取し、鞭毛運動に異常が見られるかを観察したが、運動異常は観察できなかった。Cep19変異体の過剰発現による阻害効果が生じなかった可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RabL2のエフェクタータンパク質の探索を行ったが、現在のところ発見することができていない。引き続き探索を行う予定である。しかしながら、Cep19と結合するタンパク質としてFOPを発見し、さらにFOPと結合するタンパク質としてCep350を同定することができたことから、生化学的な解析は概ね順調に進展していると考えている。また、CRISPR/Cas9システムを用いた高効率な遺伝子ノックアウト法を確立したことは機能解析を進める上で大きな進歩である。今後はこの技術を用いて関連遺伝子をKOする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 生化学的、細胞生物学的解析 引き続きRabL2のエフェクタータンパク質の探索を行う。網羅的な相互作用解析のデータベースからエフェクタータンパク質の候補遺伝子を見出したので、それが本当にエフェクタータンパク質であるかどうかを調べる。エフェクタータンパク質が同定できた場合は、CRISPR/Cas9を用いて遺伝子ノックアウト細胞を作製し、機能解析を行う。 (2) クラミドモナスを用いた解析 クラミドモナスにもRabL2とCep19ホモログが存在し、複合体を形成することから、機能も保存されている可能性が高い。ヒト培養細胞では運動性繊毛(鞭毛)の解析をすることは困難であるので、クラミドモナスを用いた運動性鞭毛の解析を行う予定である。 (3) ゼブラフィッシュを用いた解析 Cep19のドミナントネガティブ体を用いた実験では精子の運動に対する影響を観察することができなかった。ドミナントネガティブ体の発現による機能阻害ではなく、今後はCRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子ノックアウトを試みたい。
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