2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞外α-シヌクレインによるS1P受容体シグナル伝達抑制機構の解析
Project/Area Number |
15K07930
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 太郎 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80304088)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | スフィンゴ脂質 / スフィンゴシン1-リン酸 / α-シヌクレイン / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
α-シヌクレイン(ASN)はパーキンソン病やLewy小体型認知症の原因タンパク質であるが、どのような機序でASNが神経死を引き起こすのかはわかっておりず、また、本来の生理的役割についても不明である。近年、脳脊髄液のような細胞外液にもASNが存在することが報告されている。我々はこの細胞外ASNがスフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体と三量体型Gタンパク質のひとつであるGiとの共役を遮断することを初めて見いだした。その詳細なメカニズムをあきらかにするのが、本研究の目的である。 今年度新たに、細胞外ASN処理によりS1P受容体が細胞のraft画分から非raft画分へ移動することが明らかとなった。スフィンゴ脂質やコレステロールが豊富なraft画分は、Gタンパク質を始めとする様々な情報伝達系のタンパク質が集積しており,細胞外から細胞内への円滑な情報伝達において重要な役割を担っていると考えられているため、細胞外ASNの存在によりS1P受容体がraft画分から消失するという事実はきわめて興味深いと考えられた。さらにS1P受容体の局在変化のメカニズムについて検討する中で、S1P受容体のパルミチン酸化が細胞外ASNの存在下では1時間以内という速い速度で激減することを見いだした。すなわち、細胞外ASNの存在によりS1P受容体の脱パルミチン酸化→S1P受容体ののraft画分からの消失→S1P受容体-Gタンパク質の共役遮断(アンカップリング)が引き起こされている可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞外ASNによりS1P受容体の脱パルミチン酸化が引き起こされることを初めてあきらかにした。これにより、ASNの真のターゲットを同定するという当初の研究目的に、かなり近づくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外ASNによりS1P受容体のパルミチン酸化が激減したことから、理論的には脱パルミチン酸化が亢進しているか、パルミチン酸化が阻害されている可能性がある。予備的検討にてパルミチン酸化の阻害薬である2BPが細胞外ASNと同じようなタイムコースでS1P受容体のパルミチン酸化減少を引き起こすことから、細胞外ASNはパルミチン酸化を阻害している可能性が高い。パルミチン酸化酵素であるDHHCは20種以上知られているが、予備的検討でS1P受容体をパルミチン酸化するのはDHHC5であることを突き止めている。そこで、DHHC5をASNが直接阻害するのかどうかについて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
追加での内定をいただいたため、使用開始が10月以降と遅かった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の試薬購入費として使用予定である。
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