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2016 Fiscal Year Research-status Report

刷り込み学習の臨界期を決定する脳内分子機構

Research Project

Project/Area Number 15K07945
Research InstitutionTeikyo University

Principal Investigator

山口 真二  帝京大学, 薬学部, 准教授 (60398740)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords刷り込み / 甲状腺ホルモン / リン酸化
Outline of Annual Research Achievements

鳥類のヒナが、孵化直後に親を記憶して追いかける刷り込み学習は感受性期を持った学習の典型的な例である。刷り込み開始後、甲状腺ホルモン(T3)が脳内へ急速流入し、臨界期を開く決定因子となることを発見した(Nature commun. 2012)。学習臨界期の開始を決定する分子機構の解明を試み、T3の脳内注入によりリン酸化が更新する蛋白の同定をフォスフォプロテオーム解析により行った。その結果、nucleotide diphosphate kinase2 (NDPK2) のリン酸化が亢進されることが分かった(Neurosci.letter 2016)。さらに、刷り込み感受性期を開くのに必要な脳領域も新たに同定した (Neuroscience 2015)。
臨界期を有する学習では、孵化直後の親子間の刷り込みの他にも、ソングバードにおける歌学習がある。ニワトリなど巣を作らない鳥のヒナは、卵からかえるとすぐに歩くことができる。そして親鳥の後をついて行って、餌を食べることができる。それに対してソングバードなどの巣を作る鳥のヒナは、卵からかえった後自分では餌をとることができず、親の世話を必要とする。これらのヒナには刷り込みが存在しない。刷り込みが存在しない鳥でも甲状腺ホルモンは。学習に重要な機能を果たすのだろうか。ソングバードの一種であるキンカチョウの脳内甲状腺ホルモンの量変化をラジオイムノアッセイにより定量した。その結果、オスとメスでT3はピークを迎える時期が異なっていた。キンカチョウのオスは、親から歌を習い、自分で親の歌の真似をして習得する時期がある。メスは歌を歌わず、このような歌の習得はない。T3の脳内での濃度変化のオスとメスの違いが、歌学習に影響しているのかもしれない。この結果は、PloS one 2017, 12, e0169643に報告した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ある種の学習は、生後の限られた臨界期又は感受性期と呼ばれる時期にしか習得されず、その時期を過ぎると習得できなくなる。鳥類のヒナが、孵化直後に親を記憶して追いかける刷り込み学習はその典型的な例である。私たちは、刷り込み開始後、甲状腺ホルモン(T3)が脳内へ急速流入し、臨界期を開く決定因子となること、そして遺伝子的発現を伴わず速やかに作用し(nongenomic)、ヒナは記憶を獲得することを発見した。本研究では、学習臨界期の開始を決定する分子機構の解明を試みた。私たちは、T3の脳内注入によりリン酸化が更新する蛋白の同定をフォスフォプロテオーム解析により行った。その結果、nucleotide diphosphate kinase2 (NDPK2) のリン酸化が亢進されることが分かった。NDPK2のキナーゼ活性を特異的阻害剤により抑制すると、刷り込みの感受性期が再び開かなくなることから、T3の下流で、臨界期を再び開く情報伝達経路に関わっていると考えられた。さらに、刷り込み感受性期を開くのに必要な脳領域も新たに同定した。これまで哺乳類の連合野と相同な脳領域Intermediate Medial Mesopallium (IMM) は刷り込みの記憶の獲得に必須であることが分かっていた。我々はIMMの下流で働く脳領域の1つとして、Intermediate Medial hyperpallium apicale (IMHA) に着目した。T3がIMMで働いた後、IMMで刷り込みの記憶が形成され、IMHAはIMMからの神経投射を介して情報を受け取ることを明らかとした。IMHAは、一度覚えた刷り込みの記憶を思い出すこと(想起)に必要であることが分かった。このように、おおむね順調に進んでいる。

Strategy for Future Research Activity

引き続き、in vivo イメージング解析を行う。これまでにT3もしくはRhoキナーゼ阻害剤を作用させると神経細胞内のアクチンフィラメントが脱重合することが分かった。この結果は、メモリープライミングが起こる過程において、棘突起のアクチン骨格がダイナミックに変化していることを示唆している。GFPで蛍光標識したアクチンフィラメント結合蛋白をヒナ大脳に発現させ、in vivo イメージング法により、アクチンフィラメントの可逆的な重合、脱重合のダイナミクスを解析する。まず、孵化後、1日目の臨界期にあるヒナにT3を投与し、メモリープライミング成立時での棘突起上のアクチンフィラメントのダイナミクスを解析し、アクチンフィラメントの脱重合が起こっていく様子をin vivoイメージングにより解析する。さらに、その後、経時的に、メモリープライミングが維持されている状態の棘突起アクチンフィラメントを観察する。これらの解析を通じ、メモリープライミングが成立、維持される過程での形態的基盤が解明される。

Causes of Carryover

概要で述べたように、これまでに、甲状腺ホルモン(T3)が刷り込み感受性期を開くのに重要であったことを発見し、T3の刷り込み学習における一連のメカニズムの解析が進んでいる。ウイルスベクターを用いて神経細胞にGFPを発現させ、刷り込みに伴った神経回路の変化の解析をもうすこし継続して進めていきたい。そのための装置のセットアップなどに繰り越し分を用いていきたい。

Expenditure Plan for Carryover Budget

ウイルスベクターを用いて神経細胞にGFPを発現させ、刷り込みに伴った神経回路の変化の解析をもうすこし継続して進めていきたい。そのための装置のセットアップなどに繰り越し分を用いていく。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017 2016

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Sex Differences in Brain Thyroid Hormone Levels during Early Post-Hatching Development in Zebra Finch (Taeniopygia guttata).2017

    • Author(s)
      Yamaguchi, S.; Hayase, S.; Aoki, N.; Takehara, A.; Ishigohoka, J.; Matsushima, T.; Wada, K.; Homma, K. J.
    • Journal Title

      PloS one

      Volume: 12 Pages: e0169643

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0169643.

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] GABA-A受容体とGABA-B受容体の機能的な役割の転換が鳥類刻印付けの学習臨界期を決定する2016

    • Author(s)
      Naoya Aoki, Shinji Yamaguchi, Homma Koichi
    • Organizer
      平成28年7月20日第39回日本神経科学大会
    • Place of Presentation
      パシフィコ横浜
    • Year and Date
      2016-07-20 – 2016-07-22

URL: 

Published: 2018-01-16  

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