2015 Fiscal Year Research-status Report
乳がん悪性化における亜鉛トランスポーターの機能的役割と細胞内ネットワーク解析
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15K07955
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
中瀬 朋夏 (高谷) 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (40434807)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 乳がん / 亜鉛 / 亜鉛トランスポーター / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、亜鉛トランスポーターが制御する亜鉛イオンは、細胞内シグナル伝達分子として機能することが示され、この亜鉛シグナルの理解によって、これまで解明されなかった疾患の発症•進行を説明できる可能性がある。本年度は、未だ大部分が不明な乳がん悪性化における亜鉛および亜鉛トランスポーターの役割について検討した。乳がん細胞(MCF-7、MDA-MB-231)、前立腺がん細胞(DU145)、子宮頸がん細胞(Hela)を固定後、抗体染色により亜鉛トランスポーターZIP6の発現量を検討した結果、女性ホルモン依存性乳がん細胞MCF-7において、ZIP6の高い発現が認められ、遺伝子発現レベルも臨床所見と同様の傾向を示した。さらに、亜鉛イオンの強制添加および亜鉛特異的キレート剤TPENを用いて、細胞内外の亜鉛ネットワークを撹乱させた結果、細胞内外の亜鉛イオン量の変化に伴って、ZIP6の発現量は大きく変動し、ZIP6を介した亜鉛イオン恒常性は、乳がん細胞の生存能力に重要な役割を果たしていることを示した。 次に、これまで、乳がん細胞周囲の高濃度グルコース環境は、乳がん悪性化因子に成りうることを明らかにしてきたが、その機序として、ZIP6の発現変動に伴う細胞内亜鉛イオンの恒常性撹乱が上皮間葉分化転換EMTの亢進に寄与していることを新たに見出した。また、亜鉛イオンの制御により、抗がん剤の効果を制御できるか否か検討した結果、抗アポトーシス因子Bcl-2の特異的阻害剤YC-137の感受性は、細胞外亜鉛濃度に依存して変化した。以上より、亜鉛イオンおよびその制御を担うZIP6は、乳がんの悪性化に深く関与し、乳がん細胞内外の亜鉛ネットワークは、乳がん細胞の運命を支配することが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、乳がんにおけるZIP6を介した亜鉛ネットワークは、乳がん細胞の運命の鍵を握っている可能性があることを明らかにした。さらに、Bcl-2特異的阻害剤YC-137の抗がん効果は、細胞外亜鉛濃度の影響を大きく受けることを明らかにし、治療応用に向けて重要な知見を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ZIP6特異的ノックダウンや過剰発現による遺伝子工学的な技術により、ZIP6の発現量と乳がん細胞の表現型や悪性度を解析し、細胞内外の亜鉛ネットワークを時空間的に分析することで、より詳細に乳がん悪性化の機序を解明する。さらに、乳がんモデルを用いたZIP6を起因とする亜鉛シグナルの機能的意義を解明するため、がん微小環境を考慮したin vitro実験系での亜鉛シグナルの細胞内動態と機能解析ならびに、in vivo担がんモデルにおける亜鉛シグナルの機能的役割について、検討する。
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Causes of Carryover |
亜鉛トランスポーターを細胞膜特異的に過剰発現させるベクターの購入を希望したが、海外からの輸入品となり、輸入と納品が2015年度内に行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入した細胞膜特異的に過剰発現させるベクターに亜鉛トランスポーターを搭載し、細胞内外の亜鉛ネットワークと亜鉛トランスポーターの役割および、亜鉛シグナルに与える影響を詳細に細胞レベルで解析する。
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Research Products
(9 results)