2017 Fiscal Year Research-status Report
腸管免疫系における樹状細胞分化を制御する転写因子Eosの機能解明
Project/Area Number |
15K07956
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
大岡 嘉治 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (60303971)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レチノイン酸 / 樹状細胞 / 転写因子 / Ikarosファミリー / Eos / RALDH2 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管免疫系においては免疫反応の促進と抑制のバランスを保つことが重要であり、その乱れは様々なアレルギー疾患や炎症性腸疾患発症等を引き起こす。この腸管免疫系における免疫反応のバランスの制御には、レチノイン酸産生制御性樹状細胞(DC)サブセットの役割が重要であり、その性状や分化制御の解明は、腸管免疫系の理解に欠かせない。我々はこのDCサブセットに転写因子Ikarosファミリーに属するEos遺伝子が構成的に高発現していることを発見した。本研究では、はじめに、このDCサブセットにおけるEosの役割を明らかにするため、腸間膜リンパ節に存在する樹状細胞を種々の表面抗原(CD11b、CD8α、CD103)で分画し、それぞれのサブセットにおけるレチノイン酸産生酵素RALDH2遺伝子の発現とEosおよび他のIkarosファミリー(Ikaros、Helios、Aiolos)発現を詳細に比較検討した。その結果、EosおよびHeliosの発現はRALDH2遺伝子と類似していたが、IkarosやAiolosは対照的な発現傾向を示し、RALDH2遺伝子非発現細胞で顕著な発現が観察された。これらの結果は、腸間膜リンパ節に存在する各DCサブセットの機能において、Eosをはじめとする転写因子Ikarosファミリーが何らかの働きをしていることを示唆しているものと考えられる。一方、レチノイン酸自身はRALDH2遺伝子の発現に必須な因子であり、ビタミンA欠乏マウスではその発現は著しく低下することが知られているが、ビタミンA欠乏マウスでは予想に反しEosの発現低下は認められなかった。また、レポーターアッセイ系を用いてRALDH2遺伝子プロモーター活性に対するEosの影響を検討した結果、顕著な影響は観察されなかったことから、EosのRALDH2遺伝子発現への関与は間接的なものであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
腸間膜リンパ節に存在する各DCサブセットにおけるEosおよび転写因子Ikarosファミリーの発現をレチノイン酸産生酵素RALDH2の発現と詳細に比較検討し、Ikarosファミリー間で顕著な違いがあることを見出し、その発現が、各DCサブセットの機能や分化に関与している可能性を見出した。一方、レポーターアッセイ系を用いた解析によりEosのRALDH2遺伝子発現への直接的な影響は観察されず、他の分子の介在する新たな制御機構の存在が示唆され、EosのDCにおける機能解明は当初の予定より遅滞している。
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Strategy for Future Research Activity |
DCにおけるEosの転写因子としての機能を明らかにするため、Eosをはじめとする転写因子Ikarosファミリーが他の転写因子と結合して機能することを手がかりとして、酵母two hybrid法を用いてDCにおいてEos遺伝子と相互作用する転写因子の探索に重点を移すことを計画している。また、DC各サブセットにおけるサイトカインの発現の違いにEosをはじめとするIkarosファミリーが関与している可能性を考え、種々のサイトカインの転写活性への影響を検討することを計画している。
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Causes of Carryover |
当該研究期間の後半に、研究代表者の所属講座の主任教授が定年退職し、研究代表者が昇任、講座の業務(講義・委員会)を引き継ぐことになった。そのため、研究時間が当初の計画ほど確保することができず、研究成果の取りまとめ(学会発表・論文投稿)のための実験を、期間を延長して実施する必要性が生じたため。
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