2017 Fiscal Year Research-status Report
超解像顕微鏡を用いた脂質ドメインのインフルエンザウイルスに対する機能解析
Project/Area Number |
15K07957
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阿部 充宏 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 専任研究員 (90415068)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂質の非対称性 / 脂質ラフト / スフィンゴミエリン / PIP2 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの解析により、細胞膜二重層における脂質ラフトのフリップフロップがインフルエンザウイルスの感染効率に影響を与えることがわかった。前年度は、脂質ラフトのフリップフロップに関わる因子を同定するために、一次スクリーニングでいくつかの候補が得られた後、CRISPR/Cas9で遺伝子の変異株を作製し、表現型が再現される目的の候補を絞り込んだ。本年度は、その中から、もっとも顕著な表現型を示した候補遺伝子を選別し、そのリコンビナントタンパク質を作製し、人工膜を用いたin vitroの系での解析を行った。蛍光ラベルしたスフィンゴミエリンを人工膜中に取り込ませ、リコンビナントタンパク質を加えると、in vitroでスフィンゴミエリンのフリップフロップが促進されることがわかった。このリコンビナントタンパク質は、PIP2に特異的に結合することが明らかになった。PIP2が人工膜中に存在する場合、リコンビナントタンパク質のフリップフロップの活性がさらに促進することがわかった。人工膜の形状を計測した結果、リコンビナントタンパク質はPIP2が存在する人工膜を変形する活性が認められた。変異を導入し、PIP2と強く結合する変異型リコンビナントタンパク質は、フリップフロップの活性と人工膜の変形の活性が上昇していることがわかった。膜を変形させることが報告されている既知のタンパク質を用いて、人工膜のフリップフロップ活性を測定した結果、膜の変形とフリップフロップが同時に起きることがわかった。これらの結果を考え合わせると、本研究で同定されたタンパク質は、PIP2と結合し、膜を変形させ、脂質ラフトのフリップフロップを促進していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属長退職のため、前年度から別の研究室へ異動した。異動先の研究室で新たに与えられた研究課題があるため、本研究を遂行するための時間が制約された。研究の進行状況は遅れているものの、異動先での顕微鏡を使うことにより、インフルエンザや脂質の動態を1分子レベルで測定できる系を構築し、新たな視点から本研究を遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた候補遺伝子を編集した変異型細胞で、細胞膜脂質の非対称性を、電子顕微鏡観察により解析する。また、野生型細胞および変異型細胞において、インフルエンザを感染させ、ウイルスのタンパク質や細胞膜脂質の動態を1分子レベルで測定する。また、変異型細胞の表現型を解析する。
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Causes of Carryover |
所属長退職のため、研究代表者は前年度から別の研究室へ異動した。異動先の研究室では新たな研究課題を課せられたため、本研究を遂行する時間的な制約を受けた。
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Research Products
(2 results)