2016 Fiscal Year Research-status Report
ERK5によるカテコラミン生合成促進機構とその生理的・病理的な役割の解明
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15K07963
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小原 祐太郎 山形大学, 医学部, 准教授 (40400270)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ERK5 / カテコラミン / チロシンヒドロキシラーゼ / ankrd1 / MAPK / 神経細胞 / 副腎髄質 / 褐色細胞腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に、1)神経細胞の膜興奮性を制御する各種イオンチャネルの発現に対するERK5の役割と、2)in vivoにおけるERK5の役割の解明を試みた。 1)の研究に関しては、PC12細胞においてERK5を選択的かつ恒常的に活性化させた後、各種イオンチャネルの遺伝子発現量をqRT-PCR法で定量したところ、電位依存性のL型、P/Q型、N型のいずれのCa2+チャネルの発現量の増加は認められなかったが、電位依存性のKv4.2およびKv4.3のK+チャネルの発現量が増加することを見出した。また、NGF刺激によるKv4.2の遺伝子発現の誘導は、ERK5阻害薬により有意に抑制された。さらに電気生理学的にKv4.2およびKv4.3の一過性外向き電流(A電流)を測定すると、ERK5を活性化させた細胞群ではA電流の増大が認められたことから、ERK5は神経細胞の興奮性を抑制する作用を有することが示唆された。
2)の研究課題においては、連携研究者との共同研究により、メタンフェタミン腹腔内投与によるマウスの自発運動量の増加が、ERK5阻害薬であるBIX2189の脳室内投与により、有意に抑制された。さらにメタンフェタミン投与後に線条体におけるERK5の活性化が認められ、その活性化もBIX2189で抑制された。つまり、ERK5阻害薬が何らかのメカニズムでカテコラミンの作用を抑制して、自発行動量を減少させたものと推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、今年度はin vivoにおけるERK5の役割について検討することが出来た。その結果、ERK5がカテコラミンの生合成あるいは分泌の促進を引き起こして、マウスの自発運動量を増加するという実験結果が得られた。さらに、in vitroの実験系において、ERK5がK+イオンチャネルを活性化して、膜興奮性を制御するという生理的な役割を担っている知見も得られたため、実験計画がおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も研究計画をもとに引き続いて、in vitroおよびin vivoにおけるERK5の役割を調べていく。in vitroではERK5によるミドノリンの発現制御機構とその生理的な意義を、in vivoについては、自発運動量の増加のメカニズムを詳細に調べていく。
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Causes of Carryover |
当該年度に実験に不可欠なリアルタイムPCR用サーマルサイクラーが故障したために、有償修理が必要になり、さらに、前年度購入予定だった吸光度測定用のプレートリーダーを購入したために、当初の助成金の使用計画と異なる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度に研究計画に必要な試薬類などを購入する予定である。
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