2017 Fiscal Year Research-status Report
ERK5によるカテコラミン生合成促進機構とその生理的・病理的な役割の解明
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15K07963
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小原 祐太郎 山形大学, 医学部, 准教授 (40400270)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ERK5 / カテコラミン / チロシンヒドロキシラーゼ / ankrd1 / midnolin / MAPK / 褐色細胞腫 / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ERK5により発現が上昇することが明らかになっていたmidnolinの生理的な役割について検討を加えた。Midnolinは2000年に日本のグループによってES細胞からクローニングされたが、その詳細な役割などは不明であったのが現状である。 神経細胞のモデルであるPC12細胞をNGFで刺激すると、midnolin mRNAの発現が誘導されたが、その発現はERK5阻害薬のBIX02189およびERK1/2を阻害するU0126の前処理で有意に抑制された。また、midnolinの細胞内局在は免疫染色および生化学的な細胞内小器官の分画の実験などから、主に核と細胞内小胞に局在していることが示唆された。 さらに、パーキンソン病(PD)患者様86名と健康な方100名のゲノム情報を比較した山形大学の分子疫学的な研究より、PD患者の10.5%(9人)でmidnolin遺伝子のコピー数の減少が認められ、健康な方ではその減少が全く認められなかったことから、midnolinがPDの関連遺伝子であることが明らかになった。また、PC12細胞のmidnolin遺伝子をゲノム編集により破壊した細胞株を作製したところ、midnolinを欠損させた細胞株では、NGFによる神経突起の伸展が完全に抑制された。さらに、midnolin遺伝子の破壊によって、PDの原因遺伝子の一つであるparkinE3ユビキチンリガーゼの遺伝子発現が抑制されることが明らかになった。 これらの実験結果から、midnolinはparkinの遺伝子発現を促進することにより、細胞内のミスフォールドタンパク質のユビキチン化と分解に関連することが明らかになり、その機能不全によってPDの発症および進行が引き起こされることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画予定通り、1)ERK5およびankrd1によるカテコラミン生合成機構を細胞レベルで概ね解明できたこと、2)ERK5阻害薬を用いた動物行動薬理試験が終了したこと、3)ヒト臨床検体を用いて、ERK5と副腎褐色細胞腫との関連性を解明できたため、概ね当初の計画はすでに達成できた。 さらに、ERK5によって発現が制御されるmidnolinがパーキンソン病と関連することが明らかになり、そのmidnolinの生理的・病理的な役割を一部解明できたことから、本研究課題が当初の計画以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、midnolinの生理的な役割などを、PC12細胞以外のヒト神経系のモデル細胞などで、より詳細に解明していく。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度に実験に不可欠なマイクロプレートリーダーが故障したために有償修理が必要になった。また、バイオフォトメーターの購入が実験に必要不可欠となった。さらに、研究が予想以上に進展したために、補助事業期間を延長した。以上の理由から、当初の助成金の使用計画と異なる結果となった。
(使用計画)翌年度に研究計画に必要な試薬類などを購入する予定である。
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