2015 Fiscal Year Research-status Report
植物細胞内で多様な四環性ジテルペン骨格を選択的に産生する分子機構の解明
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15K07991
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山村 良美 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30464027)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物二次代謝 / ジテルペン / チトクロームP450 / 環化酵素 / 有用物質生産 / エリシター / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「スコパリアのジ有用ジテルペンscopadulcic acid B(SDB)生合成に関与するチトクロームP450(P450)および環化酵素をコードする遺伝子群を“蓄積パターンが異なる器官”さらに“ジャスモン酸(JA)刺激に対する応答性の違い”を利用して単離および機能解析し、生合成機構を明らかにすること」である。この目的のために、我々は次世代型シークエンサーを用いた網羅的なトランスクリプトーム解析(RNA-seq解析)を行った。de novoトランスクリプトーム解析により、得られた遺伝子群に対して、BLAST検索やモチーフ検索を実施し、既知の配列との照合を行った結果、P450遺伝子(完全長、既知も含む)を91個、環化酵素遺伝子(完全長、既知も含む)を13個得ることができた。これらの遺伝子の中でもSDB生合成に関与することが予想された環化酵素遺伝子について、syn-copalyl diphosphate synthase およびkaurene synthase likeをコードすると思われる新規クローンを特定することができた。これらのクローンをそれぞれSdSCPS およびSdKSL1と命名した。双子葉植物からのsyn-copalyl diphosphate synthaseの単離例は今回の報告が初めてである。 このように、多彩な構造的多様性を生み出すのに必須なジテルペン生合成機構を解明することは、学術的な興味のみならず、将来的には有用物質の代謝工学による生産法の確立へと展開可能な、魅力的な課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のトランスクリプトーム解析については、器官間比較およびJA応答を利用した比較を行った。我々が先行研究により明らかにしたSDBの蓄積パターンが顕著に異なる2器官(若葉および根)、JA刺激によってSDB合成を誘導する前の葉および誘導した葉の計4個体を解析の対象とした。まず、スコパリアの各細胞から抽出したmRNAを用いてRNA-seqライブラリを作製した。これらのライブラリを次世代型シークエンサー(illumina MiSeq)を用いてシークエンシングを行い、配列データを取得(一次解析)後、二次解析(アセンブリ)に非モデル生物対応のTrinityアセンブリ用プログラムを使用して、葉およびJA刺激に特異的発現遺伝子の情報を得ることに成功した。葉特異的遺伝子とJA応答性の遺伝子の発現量の有意差を定量的に解析(ディファレンシャル解析)し、BLAST による相同性解析で注釈を行なった(三次解析)。それらの中から標的としている水酸化および環化反応に関与していると予測されるP450クローン(新規のものも含む)の候補をピックアップした。さらに、環化酵素syn-CPSの候補も検索した結果、新規のsyn-CPSの候補遺伝子(SdSCPS)に加えてClass I環化酵素であるkaurene synthase like (SdKSL) の単離にも成功した。 以上の結果から、本年度予定していた研究計画においては順調に進んでおり、次年度も引き続き研究目的を達成するための研究計画を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の網羅的トランスクリプトーム解析に引き続き、得られたP450、環化酵素SdSCPSおよびSdKSL1の遺伝子情報を基に遺伝子発現の解析を行う。前年度にSDB生合成に関与するP450分子種の遺伝子候補に挙げられたものから順にJA処理を用いて遺伝子発現の再現性を解析する。再現性の結果から、スコパリアにおいて、各種P450クローンの発現とSDB生合成と密接に結びついているクローンを特定する。特定したクローンについて、JA刺激に対する応答、器官特異性、さらにgibberellin抑制剤・阻害剤を用いた際のSdSCPSおよびSdKSL1遺伝子発現の挙動の相違を定量的リアルタイムPCR法を用いて解析する。加えて、それぞれのクローンの上流域に存在するシスエレメント領域の解析も行い、その配列情報を手掛かりにJA以外の様々なストレス応答(高温、低温、強光、乾燥、高塩濃度、病原菌などによる感染等)とP450、SdSCPSおよびSdKSL1遺伝子発現変動の相関性を解析する。
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Causes of Carryover |
残額が生じてしまったが、本計画は順調に進んでおり今年度の計画遂行に影響はない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は物品費(消耗品等)として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)