Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が解明したD-サイクロセリンの生合成経路においては, DcsAとDcsBがヒドロキシウレアを供給し, DcsEがO-アセチル-L-セリンを供給する。続いて, DcsDの作用によりO-アセチル-L-セリンのアセチル基がヒドロキシウレアに置換されることでO-ウレイド-L-セリンが生じ, DcsCの作用によりD-体に変換された後, ATP依存性酵素DcsGにより環状化されD-サイクロセリンが合成される。研究代表者はこれまでに, DcsDおよびDcsGの結晶構造解析に成功している。 平成29年度は, 大腸菌を用いてDL-ホモシステインを光学分割することを試みた。具体的には, DcsGを大量発現させた大腸菌の洗浄菌体を用い, DL-ホモシスシテインをD-ホモシステインチオラクトンに変換させることを試みた。DcsG反応では, ATPを必要とする。このため, 大腸菌内でATPを合成させることを目的として, 洗浄菌体にDL-ホモシステイン (10 mM) とともにD-グルコースを添加した。検討の結果, 3時間ごとにD-グルコースを0.1%となるように添加したときに, ほぼすべてのD-ホモシステインをD-ホモシステインチオラクトンに変換できた。今後も, 条件検討を行い, より高い変換率が達成できるよう検討する。また, ヘム結合型酵素であるDcsAに関しては, ヘム鉄を還元した後にCOを添加し, 共鳴ラマンスペクトルを測定した。その結果, アルギニンが結合するとヘム周辺の環境が変わること, L-ヒドロキシアルギニンとCOは共存できないこと、遠位配位子であるチオール基からヘム鉄への電子供与性は、DcsAと同じくチオール基を遠位配位子とする酸素添加酵素P450に比べて弱いことを明らかにした。これらの知見は, DcsAの反応機構を類推するのに役立つ。
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