2015 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤の副作用低減を目指した天然物アミノ酸誘導体の合成
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15K08004
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
浮谷 基彦 日本大学, 理工学部, 准教授 (40318358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深津 誠 日本大学短期大学部, その他部局等, 教授 (80181238)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗がん活性 / 天然物 / アミノ酸誘導体 / 選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然物は重要な抗がん剤リード化合物供給源であるが,正常細胞にも少なからず傷害性を示し,がん細胞に対する選択性向上が求められている.がん細胞選択的に作用する薬物として,近年,アミノ酸を模倣した抗がん分子が提案されている.がん細胞では細胞増殖に必要なアミノ酸の必要量が高く,これはアミノ酸トランスポーターの発現上昇で賄われていると考えられている.アミノ酸型抗がん分子は,がん細胞に効果的に取り込まれる,または,がん細胞へのアミノ酸輸送を阻害する事ができると期待されている. このような背景から,本研究では,天然分子にアミノ酸構造を導入することでがん細胞に対する選択性を向上する事を計画し,① 天然物α-アミノ酸誘導体合成方法の確立,② がん細胞・正常細胞に対する活性評価,を行った.基質として,マツヤニから豊富に得られ,多様な生物活性が報告されているジテルペノイドのデヒドロアビエチン酸,および,抗がん活性を持つトリテルペノイドであるベツリンを用いた. デヒドロアビエチン酸およびベツリン誘導体のがん細胞・正常細胞に対する傷害活性を評価し,現時点で,次の知見を得た;① デヒドロアビエチン酸誘導体の細胞傷害活性には,C18位カルボキシ基が必須でない,② ベツリン誘導体ではC-3, C-28位水酸基が細胞傷害活性に必須である,③ デヒドロアビエタンのC-18位N-置換型α-アミノニトリルでは,C-18位の立体化学が活性に影響し,R体よりもS体がやや強い活性を示す,④ デヒドロアビエタンでは,C-18位にα-アミノニトリル構造を導入しても細胞選択性に大きな差は生じない. 本年度得た結果は,次年度以降に実施する天然物α-アミノ酸誘導体合成研究に対する基礎的なデータになると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,基質となる天然物の準備,およびアミノ酸の合成方法を確立する計画であった.平成27年度終了時点で,立体障害が比較的大きいテルペノイドのα-アミノニトリル化(α-アミノ酸の前駆体合成)まで達成しており,合成計画はおおむね順調に進行していると考えている.また,合成中間体のいくつかが,がん細胞に対する選択性を向上したことを明らかにし,これらを踏まえて進捗状況を(2)と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,当初の研究計画通り,平成27年度に確立したアミノ酸合成方法を基に,抗がん活性を持つ天然分子のアミノ酸誘導体化を引き続き進める.α-アミノ酸前駆体では選択性の向上が認められなかったが,デヒドロアビエタン以外の抗がん性テルペノイドでも同様か,検討する必要がある.また,α-アミノ酸前駆体を加水分解し,最終生成物であるα-アミノ酸構造へ誘導する実験を,他の天然抗がん分子に幅広く適用し,アミノ酸構造が細胞選択性の向上に与える影響を多角的に検討する予定である.平行して,アミノ酸誘導体ががん細胞に細胞死を誘導する機構を,細胞死関連タンパク質の発現量から解明する実験を進める.
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Research Products
(2 results)