2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K08007
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
能勢 充彦 名城大学, 薬学部, 教授 (60228327)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖尿病性末梢神経障害 / 牛車腎気丸 / 一酸化窒素 / 八味地黄丸 / 六味地黄丸 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス糖尿病モデル用いた末梢神経障害において、本年度は牛車腎気丸(GJG)の投与量依存性と作用の持続時間など作用特性について検討を加えた。その結果、まずヒト常用量の1倍量、5倍量、10倍量と投与量を変えて効果を検討したところ、投与量依存的な感覚低下改善作用が観察され、一週間の連続投与では5倍量以上で有意な改善作用が認められた。また、投与後1時間と5時間における感覚低下改善作用を検討したところ、5時間後には改善作用が消失し、この改善作用は一過性のものであることが明らかとなった。 さらに、その作用機序解析の一つとして、一酸化窒素(NO)産生を介した血流改善を想定し、NO合成阻害剤であるL-NAME(N-nitroarginine methyl)前処置によるGJGの効果に与える影響を検討したところ、L-NAME投与により牛車腎気丸の作用が消失し、NO産生を介した作用機序が強く示唆された。また、NOドナーとして知られるsodium nitroprusside(SNP)を糖尿病マウスの背部に皮下投与したところ、GJGと同様に感覚低下を改善する作用が認められた。以上の成績は、GJGの糖尿病性末梢神経障害による感覚低下改善作用にNO産生系が深く関わっていることを示すものである。 GJGは、10種の生薬から構成される処方であり、構成生薬を一部共通する類方として八味地黄丸(GJGから牛膝と車前子を除いたもの)と六味地黄丸(八味地黄丸から附子と桂皮を除いたもの)が存在する。有効生薬を探索する目的で、これら類方の効果についても検討したところ、すべての処方で改善作用が観察された。 本年度の成果から、牛車腎気丸の糖尿病性末梢神経障害改善薬としての作用特性が明らかとなり、作用機序も一部推定することができた。さらに、類方である八味地黄丸や六味地黄丸でも本合併症の改善薬として応用可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほとんどすべての実験計画を実施し、牛車腎気丸の作用特性や作用機序を明らかにするなど、有意義な結果を得ている。臨床現場を考えた場合、類方ではあるものの、八味地黄丸や六味地黄丸といった処方の選択肢を増やすことができたのは評価できる。一方で、牛車腎気丸の作用機序における一酸化窒素(NO)産生を確認するため、投与マウスの血清中の亜硝酸塩濃度をGriess法にて定量を試みたところ、実際には血中窒素酸化物として亜硝酸塩を検出できたものの、その後の詳細な検証により、その上昇は牛膝に高濃度の硝酸塩が含有されることに由来することを突き止めるに至った。従って、現状では投与後の血中NO濃度の上昇を定量的に捉えることはできておらず、L-NAMEで消失させることができた本当の意味も現状では確定できていない。また、TRPチャネルをを介した作用の検証には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、血中の一酸化窒素を定量するということ、またTRPを介した作用機序の検証ができておらず、その点は平成28年度の研究計画に組み込むこととした。 その他については、申請時に掲げた平成28年度以降の研究計画を進める予定である。 すなわち、牛車腎気丸の糖尿病性末梢神経障害改善作用の有効生薬の絞り込みと同定、さらには有効成分についてできるかぎり探索を進めること、また糖尿病性末梢神経障害の予防作用の有無について、ストレプトゾトシン投与後から経口投与を行い、週毎にvon Frey試験を実施して、感覚障害への影響を観察する。
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Causes of Carryover |
主に温度感受性レセプターであるTRPを介した作用機序の有無を検証する実験まで実施できなかったことによる。現状で、想定しているTRPの分子種としてはTRPV1とTRPA1があり、それぞれのアンタゴニストは非常に高価なものであったため、その旨計上していたが、血中NO濃度の測定実験としての亜硝酸塩測定で偽陽性を掴んでしまい、その検証に時間を割かざるを得ず、結果として実験を遂行できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度において、温度感受性レセプターを介した作用機序の存在については検討予定である。新たに、研究協力者からヒトやマウスの温度感受性レセプターを発現する細胞での測定受諾を得ており、まずはin vitro実験系から始める予定である。
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