2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K08019
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平野 智也 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (20396980)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 蛍光 / バイオイメージング / pH / 粘性 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
特定の疾患状態にある組織を検出する手法は、診断、治療において重要となる。そのため濃度、活性が向上している蛋白質、遺伝子変異等のバイオマーカーを探索する研究がこれまで盛んに行われてきた。しかし、マーカーとして見出された分子種が疾患組織のみで発現していない場合があることや、検出を行うために酵素反応等が必要であることから瞬時に検出することが難しい等の問題があった。そこで本研究では、疾患組織特異的に起こるpH、粘性、温度等の環境変化に着目し、こうした変化を検出する新規蛍光センサーの開発を行った。 pH変化を検出する蛍光センサーにおいては昨年度までに、pH 6付近というガン組織の検出に有用なセンサーの開発に成功していた。平成28年度では、本センサーを、pHが中性である7.4から、6.0、5.0付近へと段階的に変化していくエンドサイトーシス過程の解析に応用するために、リガンド分子等との複合体形成を可能とする誘導体化を行った。粘性変化を検出するセンサーにおいては、複素環の導入、蛍光団の変換などの構造の最適化を進めた結果、検出する粘性領域が変化する、蛍光変化の様式が異なるなどの、より有用なセンサー得ることに成功した。また、これまでの粘性変化を検出する蛍光センサーでは、分子内運動の制御に基づく蛍光強度変化が主な機構であった。これに対して、我々が合成したセンサー群の機能の解析から、分子内運動制御ではない機構が蛍光変化に関与していることが示唆された。こうした知見は、新たな機能性分子の開発においても有用となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、我々が開発したpH 6付近の環境を検出可能な蛍光センサーを、エンドサイトーシス過程の解析等に用いるための誘導体化に成功した。本分子は生理機能解析のみならず、疾患組織の高発現している受容体に対するリガンド分子との複合体とすることにより、高選択的な疾患イメージングなどに応用可能である。粘性変化を検出するセンサーにおいては、その機能が改善した誘導体の開発に成功している。さらに、研究実績の概要でも述べたように、我々のセンサー独特の蛍光変化機構は、実用面だけでなく光化学の分野においても重要な知見となる。 こうしたこれまでにない有用な機能を持った蛍光センサーおよび、学術的にも重要な知見を産み出していることは、本研究の順調な進捗を示している
|
Strategy for Future Research Activity |
前項までに述べたように、pH変化、粘性変化を検出する蛍光センサーに関しては、がんなどの疾患イメージングへの展開を目指す。また、こうした蛍光センサーの開発するためのシーズとして天然物に着目した研究も進める。既に植物に由来する天然物から、蛍光性天然物数種類が得ており、これらの誘導体の合成およびその蛍光特性の解析を進め、蛍光に必要な構造要素を明らかにする。また、様々な条件における蛍光変化を解析することにより、pH、粘性、さらに温度などのこれまでのセンサーでは検出が困難であった環境変化を検出するセンサーの開発も目指す。また、これまでの研究で開発したセンサーの機能に必要な構造要素を組み合わせることによる、多機能性のセンサー開発も進める。 また、本研究課題で開発する環境変化検出蛍光センサーの機能を利用して、疾患状態にある環境選択的に作用する治療薬の開発を行う。近年こうした治療薬としては、生理活性に必須な官能基を、光により脱保護される光反応性保護基で修飾したCaged阻害剤が開発されている。こうした化合物は光照射という時間と空間を限局した部位で阻害剤の活性を賦活化することが可能であるが、光照射すべき部位の同定が困難であるという問題があった。そこで本研究では、蛍光センサー開発で得られた知見を用いて環境応答型Caged阻害剤の開発を目指す。すなわち、正常組織の環境下では光照射による活性の賦活化が起こらないが、疾患組織の環境下では活性の賦活化が起こる機能を有する、環境応答型Caged阻害剤の開発である。我々はこれまでにヒストン修飾酵素阻害剤等の治療薬候補物質を開発しており、本分子を基に環境応答型Caged阻害剤を開発し、疾患組織選択的に作用する治療薬へと展開する。
|
Research Products
(18 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Identification of cyproheptadine as an inhibitor of SET domain containing lysine methyltransferase 7/9 (Set7/9) that regulates estrogen-dependent transcription2016
Author(s)
Yasushi Takemoto, Akihiro Ito, Hideaki Niwa, Mutsumi Okamura, Takashi Fujiwara, Tomoya Hirano, Noriko Handa, Takashi Umehara, Takeshi Sonoda, Kenji Ogawa, Mohammad Tariq, Norikazu Nishino, Shingo Dan, Hiroyuki Kagechika, Takao Yamori, Shigeyuki Yokoyama, Minoru Yoshida
-
Journal Title
Journal of Medicinal Chemistry
Volume: 59
Pages: 3650-3660
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-