2017 Fiscal Year Research-status Report
ホルモン様作用で強力な制がん活性を発揮する新規VDRリガンドの創製
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15K08031
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高野 真史 帝京大学, 薬学部, 講師 (50386611)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 合成化学 / 生理活性 / 有機化学 / 薬学 / ビタミンD |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き検討してきたビタミンD誘導体群の合成を行った。すなわちA環2位置換活性型ビタミンD3誘導体の合成において、ビタミンD受容体と効果的に相互作用しうる2位置換基上の官能基として、複素環窒素原子に着目した2位方向にアゾールをもつ活性型ビタミンD3誘導体と、化学的安定性で優位であり、また特徴的な生物活性を期待できるジエン構造を有する19-ノル型誘導体の両方の構造的特徴をもつ活性型ビタミンD3誘導体の合成および生物活性評価をさらに行った。昨年度までに既に2位置換基上にテトラゾールプロピル基やトリアゾールプロピル基を有するいくつかの誘導体合成を達成しているが、それらの合成に用いたルートを基に、他のアゾールを有する誘導体の新規合成を検討した。CD環前駆体ヘテロアリールスルホンはビタミンD3より構築し、2α置換基上に各種アゾールアルキル基を有するA環前駆体は、(-)-キナ酸から得られる2α-(3-ヒドロキシアルキル)基を有する合成中間体の一級水酸基をSN2反応で複素環へと置換することでN-アルキル置換アゾール位置異性体として構築した。それぞれ単離精製し、CD環前駆体とJuliaオレフィン化、脱保護することで2位置換基上に各種アゾールアルキル基を有する-19-ノル型ビタミンD3誘導体の2位のジアステレオマーやアゾール環上窒素原子位置異性体等を合成した。本年度は2位側鎖長についても検討し、テトラゾールエチル基を有する誘導体合成を達成した。 合成では種々の誘導体合成に適用可能な汎用性の高いルートを確立するために合成効率についても探求し、立体選択性、収率などにおける反応条件の最適化を行った。 得られた誘導体についてHPLC精製後、 VDR結合親和性や各種生物活性評価、CYP24A1による代謝研究等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビタミンD3誘導体A環の化学修飾として、2α側鎖上に種々のヘテロ環を有する新しい19-ノル型ビタミンD3誘導体の合成を達成した。2位側鎖長を変えた誘導体の合成法も確立した。本合成では、A環前駆体とCD環前駆体をそれぞれ合成しそれらを結合する収束的な合成法を用いており、ここで確立した合成ルートは、さらに異なるアルキル鎖長のリンカー部を有する種々のビタミンD3誘導体合成に適用可能な汎用性の高いルートであり、合成効率が高く、多くの新規誘導体合成につなげることが可能である。 また、得られた誘導体の各種生物活性評価、代謝研究を行うことができ、それら誘導体における構造と活性の関係、代謝抵抗性について考察することも可能である。 有用な誘導体の主代謝物の候補化合物の化学合成も行っており、生物活性の向上と代謝抵抗性を考慮した誘導体デザインが可能になりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は最終年度として、平成27年度から29年度に得られた結果を基にして、引き続き異なるアルキル側鎖長、ヘテロ環を有するA環部位を合成し、アゾールを部分構造として有する2位の構造修飾の最適化を行う。合成した各種A環部位はCD環部位と組合せ、さらなる特性の増強を目的とした修飾の相乗効果について検討を行う。同時修飾については、これまでに報告されているビタミンD誘導体において、最も高活性なA環前駆体とCD環前駆体が最良の組合せとは限らないことを見出しており、特に強力な活性や作用分離能を有するものを基礎とし、可能な組合せについて誘導体を網羅的に合成し、それぞれについて生物活性評価、代謝試験を行い、目的の活性プロファイルに対し最も理想的な組合せを見出す。また有用な誘導体については引き続き主代謝物の候補化合物を化学合成し、正確な構造決定とより詳しい代謝物の各種生物活性評価や、さらなる代謝についても検討を続ける。
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Causes of Carryover |
平成30年度も多くの誘導体合成を目的とし、原料合成に必要な有機合成用試薬と有機溶媒、また合成した化合物の分離精製に必要なシリカゲル等、主に消耗品について研究費を使用する。また広く意見交換をし、有機合成化学及びビタミンD研究の最前線を知るため、得られた成果を平成30年5月開催されるVitamin D Workshopにて発表予定であり、それらをまとめて雑誌論文への投稿を予定している。 平成30年度に繰り越し分の一部は、国際学会発表および論文投稿にて使用予定である。
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