2016 Fiscal Year Research-status Report
HDAC阻害剤のエピジェネティック制御を利用した遺伝子治療製剤の創製
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15K08035
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
長岡 康夫 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (90243039)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / HDAC / ナノ粒子 / EPR効果 / PEG / Vorinostat / プロドラッグ / SAHA |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は抗がん剤としてのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDI)候補化合物の創製と探索を行うと同時に、HDIのエピジェネティックな遺伝子発現制御効果を利用した機能分子の創製に取り組んできた。本研究では、本剤の弱点である血中安定性の改善とEPR効果の併授を期待した、高分子キャリア-HDI複合体を合成し、その効果を評価すること、また、その発展型として、HDIのがん細胞特異的な遺伝子発現増強効果を加味した、高分子遺伝子キャリア-HDI複合体による、がんの遺伝子治療との相乗効果の可能性を探ることを目的としている。 平成27年度までに高分子キャリアHDI複合体の改良を加えてきたが、その過程で、大量合成のしやすさや、合成できた分子の構造確認の簡便さも、今後の動物での薬理作用の評価に供することや、更なる物性改善を行う上で重要であることが、強く認識された。そこで、平成28年度は、これらの要素も加味した分子構築を行い、その性能について検討した。即ち、主に酸性アミノ酸からなるポリペプチドにPEGが結合した分子を基本単位とし、それに対し、正電荷官能基とHDIを後から導入したPEG-ペプチド分子の単位を合成した。また、それらをペプチド末端にジスルフィド結合部位を導入することにより、ペプチドPEG複合体がタンデム型に重合することも可能とした。本法の導入により、多様な高分子キャリアHDI複合体の作成が、簡便かつ迅速に行うことができるようになり、製剤の最適化効率が格段に向上した。平成29年度は、本法を基に、更に高効率な製剤開発を推進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までに、様々な改良を加えてきた本製剤は、固相法によるペプチド合成を基盤としたもので、短時間で基質が作成できる点で優れている。この間の研究で質量分析やNMRを用いた分析で、通常その同定が困難とされるPEG化製剤においても、確実な同定が可能になっている。また、製剤の細胞親和性を左右する表面電荷や、EPR効果の発現に重要な粒子径の測定も可能となるなど、研究体制が熟成してきた。また、平成28年度は、単位分子の構造を単純化することにより、正電荷ペプチド合成から、HDI複合体形成に至る過程を、さらに効率化することに成功した。この方法を用いることで、分子構造の最適化が迅速に行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、今までに構築した効率的な新合成法を利用して、様々なパターンの製剤を作成し、更なる最適化を行う予定である。合成した製剤は、培養がん細胞に対する増殖抑制活性を評価すると共に、血清中での安定性や粒子径の最適化を行い、その性能を評価する。最適の性能を持つと期待されるものについては、担がんマウスなどを用いた動物レベルの実験でその効果を検証する。評価の手法については、過年度の研究の過程で習得しており、効率良くデータ収集が可能と考えられる。分子の設計に変更がある場合でも、分子の合成は迅速に行うことができ、構造同定法も確立していることから、各種試験への供給において障害とはならないと考えている。本研究課題は最終年度となるため、成果が得られるよう、効率の良く研究を進めることや、計画的な研究推進をこころがけたい。
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Research Products
(7 results)