2015 Fiscal Year Research-status Report
次世代HIV治療法開発を指向したHIV病原性タンパク質の新規翻訳機構の解明
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15K08044
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高宗 暢暁 熊本大学, イノベーション推進機構, 准教授 (60322749)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HIV / Nef / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、Nef mRNAの5’非翻訳領域(5’UTR)にNefの翻訳に必須となる配列NERの存在を明らかにし、Nefが他に例を見ない独特な翻訳メカニズムで発現している可能性が考えられた。本研究では、NERを介したNef翻訳の機構を解明し、HIV感染症の機能的治癒の治療法開発に貢献しうる分子ターゲットを見いだすことを目的としている。 平均的なmRNAはその5’UTRは平均200ヌクレオチド(nt)程度であり3’UTRは1000 ntを超える。それに対して、Nef mRNAは5’UTRが700 nt以上で3’UTRは200 nt程度である。一般的に3’UTRはmicroRNAによる翻訳制御の標的として配列を含むとして近年注目されている。一方、5’UTRは翻訳開始・促進等に関わる構造・領域の存在が知られている。例えば5’Cap構造、ウイルスにおいてはIRES 等である。この非常に長いNef mRNAの5’UTRに着目し、未知のNef翻訳促進・増強配列の存在を仮定し、その探索を行った。 その結果、Nef mRNAの5’UTR内のある種の変異体においてはNefの発現が著しく低下することを明らかになった。IRES (活性)とは関連せず5’cap依存的なNef翻訳効率の低下が起こっていることを明らかにし、これまでに例のないユニークな翻訳機構の存在が示唆された。また、そのNERの特徴的な2次構造がNef翻訳に重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Nef mRNA発現ベクターを構築し、これを利用して、5’UTR内に存在するNERの絞り込みを行った。このとき、RNAfold及びCentroidFoldによるRNAの2次構造予測結果を参照しながら、欠損・塩基置換変異体を作製しNERの特定を試みた。その結果、Nef mRNAの5’UTRの各種変異体において、Nefの発現の低下を示すものと低下を示さないものとに分類され、得られた情報をもとにNefの効率的な発現に重要なNER領域の特定を進めている。このNERが関連する効率的なNef発現は、IRES (活性)とは関連せず5’cap依存的なNef翻訳が起こっていることを明らかにした。これまでに例のないユニークな翻訳機構の存在が示唆された。また、そのNERの特徴的な2次構造がNef翻訳に重要であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度において、NERの絞り込みを進めてきたが、まだ十分なNERの解明に至っていない。今後において、より効率的な研究遂行のために、構築しているNef mRNA発現ベクターに加え、Nef発現を簡便に検出できるルシフェラーゼレポーター発現系を構築する。これらを利用し、必要十分なNERの特定を継続する。 上記の計画と同時に、NERをコードする領域内の変異によるNefの発現低下が、Nef機能の低下をどの程度誘導するかを定量的に評価する。HIV感染性増強作用やNefのCD4及びMHC class Iダウンレギュレーション活性などを指標として評価する。 さらに、NERを介した翻訳系の簡便な評価系の構築を目指す。NERを介したルシフェラーゼ等のレポータータンパク質発現細胞株を構築し、関連する特異的なtrans因子や阻害化合物の探索を試みる。以上の研究を通してNERを介したNef翻訳に関与するcis-trans因子の解明とNef発現特異的阻害剤の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
計画通りに研究を遂行したが、効率的な物品の利用やキャンペーン価格時の物品購入に努めたことなどが、結果として次年度使用額が発生したと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額については、主として物品費や旅費として使用し、よりチャレンジングな研究や、積極的な成果発表のために利用することを計画する。
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