2016 Fiscal Year Research-status Report
LC/高分解能MSによるアンプリコン分析法の開発と有毒生物の種判別への応用
Project/Area Number |
15K08060
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
宮口 一 科学警察研究所, 附属鑑定所, 鑑定官 (10370884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 彦人 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (40392261)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液体クロマトグラフィー/高分解能質量分析 / セリ / ドクゼリ / 生物種判別 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、液体クロマトグラフィー/高分解能質量分析(LC/HRMS)によって、100 bp前後の比較的短いPCR増幅産物(アンプリコン)の塩基組成を明らかにする方法を新規に開発し、有毒生物の種判別に応用することを目指している。 平成28年度は、わが国をはじめアジア地域で広く食用とされているセリと、猛毒のドクゼリとの識別法について検討を行った。ドクゼリはセリ科に属し、セリと同じように水辺で生育する。セリとドクゼリが混在して生育している場合もあり、野生のセリと間違えてドクゼリを採取することによる誤食事故がしばしば発生している。ドクゼリはその名の通り中枢神経系に作用する猛毒のシクトキシンを含有し、死亡に至る場合もあるため、公衆衛生及び犯罪鑑識の点からこれらの識別は重要な課題である。 セリ及びドクゼリの葉緑体trnLマーカーについて、サンガー法による塩基配列解析を行い、trnLマーカー内においてセリ及びドクゼリ特異的に61 bpのアンプリコンを増幅するPCRプライマーを設計した。セリとドクゼリではプライマーに挟まれた領域の塩基組成が異なることから、得られたアンプリコンをLC/HRMSで解析することにより、セリであるかドクゼリであるかを判定することが可能となる。 実際に、市販及び野生のセリ並びにドクゼリ及びドクゼリの調理品について、市販のキットでDNAを抽出した後、PCR増幅を行い、LC/HRMSにより解析した結果、すべてのセリ及びドクゼリ試料の識別が可能であった。また、約50種類の植物について、上記の特異的プライマーによる増幅がみられないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度のフグの種判別に続いて、代表的な有毒植物であるドクゼリの識別法の開発に一定の目処が付いたため。
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Strategy for Future Research Activity |
セリとドクゼリについてはサンプル数が少なく、特にセリについては国際塩基配列データベースへの収載数も少ないため、野生のこれら植物をできるだけ多く収集してサンガー法による塩基配列解析とLC/HRMSによる分析を行い、LC/HRMSによる分析法の妥当性について確認し、論文化を目指す。論文化に際しては、ドクゼリの有毒成分である有毒成分の化学分析を行い、ドクゼリであることの化学的な証明を行う。さらに、初年度からの懸案である、モノアイソトピック質量から塩基組成を計算するDNA塩基組成決定プログラムについても、開発を行いたい。
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Causes of Carryover |
外国旅費と英文校閲については予定通り使用したが、消耗品費については予定額を下回った。また、国内遠隔地での試料収集を平成28年度は実施しなかったため、国内旅費に未使用が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
6月にアメリカ質量分析学会年会(インディアナポリス)においてセリとドクゼリの識別に関する研究成果を発表するための旅費及び参加費に充当するほか、植物採集や学会参加のための国内旅費、塩基組成決定プログラム開発のためのコンピュータ環境の整備、DNAシーケンスの委託、分析用ODSカラムなど有毒成分の化学分析のための消耗品の購入などに充当する。
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