2017 Fiscal Year Research-status Report
急性脳症解明のための細胞核とミトコンドリアにおける細胞死制御分子の機能解析
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15K08062
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
近藤 一成 国立医薬品食品衛生研究所, 生化学部, 部長 (40270623)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞死 / アポトーシス / スギヒラタケ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食用とされてきたスギヒラタケきのこによると考えられる食中毒死亡事例(約20名死亡)に関連して、この菌類摂取による脳症発生原因究明や原因物質の特定およびそのメカニズムに関する研究を行うものである。これまでの研究で、この菌類摂取によるミトコンドリア機能障害が深く関係していることを示してきた。さらに、脳症とミトコンドリア機能障害に関わる分子としてAIFを特定した。一方で、AIFはミトコンドリアだけではなく核内においても重要な役割を果たしていると考えられるが、AIFの核内での機能を解析できる実験系が存在しないことから明らかにはなっていない。ミトコンドリアに局在して酸化的リン酸化に関与する一方、細胞核に移行して細胞死を誘導するという相反する機能を有するとこれまで考えられている分子AIF (apoptosis-inducing factor) のそれぞれの細胞内小器官での役割を完全に解明するために、神経系培養細胞を用いて、CRISPR/Cas9を用いてゲノム編集を行い、核移行できない変異体AIFをROSA26領域に導入した。次に、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集により内在性AIFのエキソン7を破壊することでAIFを機能喪失させた。これにより、核に移行できないAIFのみを持つ細胞を構築した。ウェスタンブロット、細胞内局在、PCR等により目的の細胞が樹立できたことを確認した。AIFのミトコンドリアおよび核内での役割を解析中である。神経系培養細胞を用いて、神経突起誘導させることで、核内へ移行できないAIFの神経突起成長に与える影響なども合わせて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、スギヒラタケきのこ摂取による脳症発生原因究明と機能解析に関する研究である。分子AIF機能の完全解明を目指してこれまでにミトコンドリアにのみ局在して核に移行できない変異体を作製 して核内での役割を検討しようとしてきた。前年度にエキソン3の破壊による変異体作製が難航したため、核移行できない変異体を一旦ROSA2領域へCRISPR/Cas9を用いて導入して、その後、CRISPR/Cas9を用いてエキソン7を破壊することで内在性AIFの機能欠失を目指し行った結果、目的の変異体作製に成功した。現在、ゲノムの目的箇所の配列確認およびタンパクレベルでの確認を終了して、この細胞を用いた機能解析を開始しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
アポトーシス性の様々な刺激下においてもミトコンドリアに局在して核移行できないAIF変異細胞株を樹立した。これを用いて、AIFの核内での役割を解析する。これまでの研究から、腎疾患患者で中毒事例が多く見られたことが明らかになっている。腎ではAIFの高発現が見られるが、腎疾患ではその低下が示唆される。スギヒラタケきのこ成分が、変異AIFのみを持つ細胞を刺激した場合に、アポトーシス性細胞死に与える影響を、細胞生存率等でまず評価する。また、神経系培養細胞をNGFで刺激して神経突起伸長を誘導した時に与える影響を解析する。予備検討からは、野生型AIFが神経突起伸長に影響を与えるなど、AIFの核内での役割である細胞死誘導とは正反対な、生存に必修な機能も有していることを示唆する結果を得ている。詳細に検討することで、AIFの核内での本当の役割を明らかにできると考えられる。
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Causes of Carryover |
研究最終年度の予定であった平成29年度は、所属する研究所の移転があり、実験が半年実施できなかったために期限延長を行った。そのため、
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