2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K08069
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
橋本 征也 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (90228429)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | キニジン / 脂溶性カチオン / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、ヒト腸由来Caco-2細胞とLS180細胞にH+/脂溶性カチオン対向輸送系が発現していることを明らかにしてきた。本研究では、その分子的実体を明らかにすることを試みた。すなわち、有機カチオンや有機アニオンを輸送することが知られているSLC22Aファミリーに着目し、未だ機能が明らかになっていない遺伝子の機能を明らかにすることを目指した。具体的には、Caco-2細胞とLS180細胞に加え、ヒト腸由来HT29細胞においてもH+/脂溶性カチオン対向輸送系が機能していることを見出した。次に、3種類の細胞に共通して比較的多量に発現している遺伝子がH+/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体である可能性が高いと考え、SLC22A遺伝子mRNAの発現量を測定した。その結果、機能が未同定の遺伝子の中で、SLC22A15、SLC22A17、SLC22A23が3種類の培養腸上皮細胞に比較的多量に発現していることが明らかになった。そこで、ブタ腎臓由来LLC-PK1細胞にこれら3種類の遺伝子を強制過剰発現させ、H+/脂溶性カチオンの輸送活性を測定した。しかし、いずれの遺伝子の強制発現細胞においてもキニジン(脂溶性カチオン)の輸送活性の有意な上昇は認められなかった。従って、SLC22A15、SLC22A17、SLC22A23は、小腸のH+/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体ではないものと考えられた。一方、本研究では遺伝子の強制発現実験で用いたLLC-PK1細胞にも内因的にH+/脂溶性カチオン輸送系が発現していることが明らかになったことより、腎臓の尿細管上皮細胞に水溶性有機カチオンを輸送するOCTやMATEといったトランスポーター以外に、H+/脂溶性カチオン対向輸送系が存在することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SLC22Aファミリーで機能が未知の分子種について機能解析が一段落した。また、腎臓の尿細管上皮細胞にもH+/脂溶性カチオン対向輸送系が存在するという新たな知見が得られたことから、我々の研究が新展開できるものと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
小腸と腎臓のH+/脂溶性カチオン対向輸送系の分子実体として、SLC22Aファミリー以外のトランスポーターに研究対象を広げ、構造と機能解明の研究を鋭意推進する予定である。
|