2016 Fiscal Year Research-status Report
がん患者における病期に基づくオピオイドの鎮痛効果および有害作用の変動予測法の構築
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15K08070
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
川上 純一 浜松医科大学, 医学部附属病院, 教授 (50272539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 隆文 浜松医科大学, 医学部附属病院, 副薬剤部長 (80422749)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん病期 / オピオイド / フェンタニル / 鎮痛補助薬 / プレガバリン / がん悪液質 / 薬物動態 / がん性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん病期におけるオピオイド鎮痛薬の体内動態および臨床効果の個人差要因を明らかにするためにがん終末期に頻用されるフェンタニル貼付剤と鎮痛補助薬のプレガバリンの体内動態および有害作用の個人差要因を明らかにした。がん悪液質の進行度分類については、臨床症状に基づくによる分類及び炎症反応に基づく分類を用いた。フェンタニル貼付剤の使用患者において、すべての患者が進行がんであり、ほとんどの患者においてRefractory CachexiaまたはCachexia、Glasgow prognostic scoreの2に分類された。血中フェンタニル濃度および血中濃度比(ノルフェンタニル/フェンタニル)においては、がん悪液質の進行度の影響は認められなかった。さらには、悪液質の進行に伴い上昇する血中IL-6濃度についても、フェンタニルの薬物動態との関連は認められなかった。その一方で、血中フェンタニル濃度および血中濃度比は、CYP3A5*3や性差の影響を強く受けた。また、鎮痛補助薬のプレガバリンの血中濃度については、がん悪液質の進行度との関係は認められなかったものの、オピオイドとの併用時に血中プレガバリンの濃度上昇が認められた。さらには、プレガバリンとオピオイド併用時には中枢症状の発現率が上昇していたものの、それらはプレガバリンの血中濃度との直接的な関係は認められなかった。これまでのデータ(Sato H, et al. Eur J Clin Pharmacol 2016;72:1463-1470)と併せて、がん悪液質はCYP3Aの基質薬物への影響は一様でないことが示された。また、がん病期ごとで使用するオピオイが異なることから、がん病期ごとで頻用されるオピオイド中心に体内動態や臨床効果の評価が必要であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた臨床試験が開始され、解析可能な症例も集積されたことから、おおむね順調に研究が進展した。がん病期を通じて、同じ薬剤を使用することが少ないため、がんの病期ごとで頻用されるオピオイドや鎮痛補助薬について、評価および解析することに方針を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度については、オピオイドとともに、がん病期における早期から進行期に使用されるトラマドールおよびプレガバリンを中心について、遺伝情報を含めたがん病期、悪液質の進行度に基づく各薬物の体内動態の個人差要因についての解析を行う。特にトラマドールでは遺伝的多様性によって、薬物動態が影響を受けることが既に報告されており、それらの影響ががん病期や悪液質の進行度によってどのように変化するか定量的に評価を行う予定である。また、がん患者における臨床症状(中枢症状、増量、忍容性)に関しても、引き続き患者情報の収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
オピオイドや鎮痛補助薬の標準試薬に関しては、他財源より購入することで済んだため、研究継続のための消耗品の購入費用が予想していたよりも安価であった。また、臨床研究の解析が順調に進んでおり、基礎研究の実施が不要であったため、そのために確保した消耗品の購入費用が不要になった。さらに別財源により、質量分析計の購入が可能であったことにより、学内の共同機器の使用料が不要になったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究費については、トラマドールの薬物動態解析を重点的に行うため、主にそれに関連した消耗品、情報収集のための学会参加、臨床検査項目の外部検査機関への委託費用および学内共同機器の使用料に対して、研究費を使用する。
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