2016 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化ヘパリンナノ粒子が示す抗炎症作用のメカニズム
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15K08071
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30243041)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘパリン誘導体 / 抗炎症反応 / 数理モデリング / 転写因子 / 因子分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は過去の研究において、ヘパリンの脂肪鎖結合体が自己組織化ナノミセルを形成し、これが薬剤のない単独で抗炎症作用を発揮し、関節炎モデルマウスにて炎症の進行を抑制することを見出した。本研究ではそのメカニズムを解析するために、まず、単球系細胞をLPS刺激した際のマイクロアレイデータをメタ解析し、LPSにより有意に変動する遺伝子を同定した。さらに、それらの遺伝子の転写開始位置上流の転写因子結合領域(TFBS)から確度の高い33個の遺伝子を見出した。実際に、ヒト単球由来細胞THP-1細胞にLPSを作用させ、マルチプレックス法を用いてこれらの各遺伝子の発現変動を測定し、得られた時系列データに対してクラスタリング解析を行った。多くの遺伝子はLPS処理後120分あるいは140分後にピークを向かえ、遅れてピークを迎えた遺伝子にはNF-kappaB関連遺伝子が多く含まれていた。さらに、この遺伝子発現制御因子をS-systemモデルに基づいて定量的に明らかにするために、最小二乗法とスパース因子分析を組み合わせた因子解析アルゴリズムを開発した。各遺伝子発現データを平滑化スプライン補間し数値微分により各時刻における遺伝子発現変化速度を算出し、S-systemモデルに基づいて解析を行ったところ、潜在的転写因子の活性プロファイルとそれらに対する各遺伝子の因子荷重が算出されたさらに、各遺伝子のTFBSとの相関解析から、LPSによって活性変動する転写因子としてNF-kappaB、AP-1、STATの3つが推定された。また、各種ムコ多糖のステアリルアミン結合体を合成し評価を行ったところ、ヘパリンには限らず各種ムコ多糖でもナノ粒子化による抗炎症作用の増強が観察されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LPS応答として起こる遺伝子発現変動をネットワークレベルで解析するためにマルチプレックス法を導入し、各遺伝子発現を一斉測定することに成功した。さらに得られたデータを定量的に解析するための新規因子分析法も開発できた。また、各種ムコ多糖の脂肪族アミン結合体の合成に成功し、ヘパリンに限らず各種ムコ多糖の誘導体でも抗炎症作用が認められることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現データのネットワーク解析により同定された転写因子とその下流遺伝子に着目し、ヘパリンおよび各種ムコ多糖の脂肪族アミン誘導体がいずれのパスウェイに対して働き抗炎症作用を示すのかを解析する。
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Causes of Carryover |
ヘパリンナノ粒子の抗炎症作用に関する構造活性相関を検討する中、ヘパリン以外のムコ多糖類でも脂肪族アミン修飾による抗炎症作用が同様に確認されたことを受け、その合成研究を展開することとし、経費のかかるin vitro細胞系での時系列データの収集を次年度に纏めて行うことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヘパリン以外の各種ムコ多糖類のナノ粒子においても詳細なメカニズム解析を行い、それらの構造活性相関を明らかにする。経費は、これを実行するためのin vitro細胞系での評価実験に充当する。
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