2015 Fiscal Year Research-status Report
オキサリプラチンベース化学療法における有害事象予防システム
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15K08085
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
伊藤 由佳子 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (30278444)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 個別化医療 / 大腸がん / オキサリプラチン / 末しょう神経障害 / PK/PD解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
切除不能進行再発大腸がんに対する化学療法であるオキサリプラチンベースレジメンでは、深刻な有害事象として末梢神経障害による投薬の中断・中止がレジメン完遂率の低下と延命効果抑制に寄与していることが問題となっている。われわれは、これまで、PK/PD理論に基づいて、血漿中5-FU濃度とバイオマーカーであるDPD活性としての血漿中Ura/UH2比から抗腫瘍効果と骨髄抑制を予測することを見出したが、併用薬であるオキサリプラチン(以下L-OHP)の有害事象に関するファクターが存在していないため、レジメン全体をコントロールすることは困難である。そこで併用薬の有害事象に関する因子をPK/PD理論に導入することでオキサリプラチンベースレジメンにおける個別化治療の実現に向け、患者検体から得られる血漿中薬物濃度、抗腫瘍効果予測のためのバイオマーカーおよび有害事象予測のバイオマーカーの情報から用法用量をコントロールすることでレジメン完遂率改善とMST延長に貢献することを目指して研究を進めている。今年度、L-OHP投与後の血漿中L-OHP濃度と末梢神経障害の発現頻度との間の相関性の有無について検討したところ、血漿中L-OHP濃度の上昇に伴って末梢神経障害の発現頻度の上昇を認める結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラットにおけるL-OHP動態特性を確立するため、大腸癌レジメンに従って、正常ラットにL-OHPを2種の用量(5㎎/㎏、8㎎/㎏)で週1回、静脈内投与を4週間繰り返し、1週目および4週目について投与後120分にわたり血漿中L-OHP濃度を測定したところ、用量依存的に血漿中L-OHP濃度の経時的推移を認めた。末梢神経障害の経時的変化を観測するため、同ラットにおいて、週1回のL-OHP投与直後、48、72時間後における、末梢神経障害、すなわち、急性末梢神経障害及び蓄積性末梢神経障害を行動薬理学的手法により測定した。前者は冷感アロディニアとされており、アセトン法にて評価し、一方、後者の蓄積性末梢神経障害を示す機械性アロディニアにはvon Frey test法にてそれぞれ評価を行った。冷感アロディニアはL-OHPの投与を繰り返すことに伴って、高用量時の冷感アロディニアの発現頻度が上昇する傾向を認め、機械性アロディニアについては初回投与時から一貫して高用量時において刺激に対する閾値が低下していることが認められた。両アロディニアにおいて2用量間に有意差は認めなかったものの、用量に依存して末梢神経障害の発現の検出頻度が増大することを確認した。以上の成果は日本薬学会第136年会(2016年3月)において報告している。これらのデータからPK/TD解析を試みることを予定しており、目下解析検討中である。当初の計画では、本年度内に大腸癌モデルラットにおいても血漿中L-OHP濃度と末梢神経障害との相関性の有無についても確率する予定であったが、少し遅れている状況にある。しかしながら、これについても、目下データ採取中であり、順次結果をまとめられる目処は立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、L-OHPに関するPK/TDモデルを確立させた後、大腸癌モデルラットにおける治療実験を5-FUとの併用レジメンに従って投与を行い、その際に得られる血漿中5-FU濃度、バイオマーカーであるDPD活性、血漿中L-OHP濃度と末梢神経障害の発現頻度を用いてPK/PD、PK/TDモデル解析の妥当性を検討する予定である。これら基礎的知見が、臨床での有害事象予測につながることを目指す。
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Causes of Carryover |
当初予定していた旅費およびその他の経費について見積を上回る実績となった。しかし、物品費の内訳のうち、動物実験においてやや遅れいている部分の経費が余剰分となって、旅費および他の経費に利用するに至った。上回った要因として、旅費については、研究成果発表と情報収集のための学会参加が予定よりも一回上回ったためであり、その他の経費については、論文投稿のための投稿費用と英文校正費について当初の見積以上を計上したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においても学会関係費と論文投稿費については、見積を上回る可能性もあるが、全体として年度内の予算での使用を予定している。
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Research Products
(6 results)