2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K08096
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
直良 浩司 島根大学, 医学部, 教授 (90243427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 信弘 島根大学, 医学部, 准教授 (30529657)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チロシンキナーゼ阻害薬 / PK-PD / 肺癌 / 腎細胞癌 / LC-MS/MS / 血中濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、当院において臨床使用される経口チロシンキナーゼ阻害薬(ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ)を研究対象薬物に設定し、以下の検討を進めている。 ①チロシンキナーゼ阻害薬の定量法確立:上記薬剤に加えて、エルロチニブおよびスニチニブの活性代謝物の定量を併せて実施することとした。測定方法は、既報を参考に簡便で迅速測定可能な液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)法の定量条件の検討を行い、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブに関してクロザピンを内部標準物質として定量法を確立した。ソラフェニブ、スニチニブ、活性代謝物については、高速液体クロマトグラフ(HPLC)法による定量を考えており、現在、検討を進めている。 ②薬物相互作用および特殊病態における薬物体内動態変化と薬理効果および副作用発現との関連性解析:昨年度は、薬物相互作用による体内動態変化に関する症例調査を実施した。肝代謝酵素を誘導するリファンピシンを服用する肺結核患者におけるゲフィチニブの体内動態をリファンピシン併用前後で比較し、リファンピシンの酵素誘導により、ゲフィチニブの血中濃度は10分の1に低下することを明らかにした。また、血液透析患者におけるゲフィチニブの体内動態を検討し、経時的な血中濃度の上昇が観察された。その要因として、腹水・胸水などへの移行の可能性を推定した。 ③チロシンキナーゼ阻害薬の副作用発現状況:臨床使用されているチロシンキナーゼ阻害薬による副作用発現状況を後方視的に調査した。研究対象薬剤に共通で、特徴的な副作用であるハンドフットシンドロームと、スニチニブの副作用である甲状腺機能への影響について調査し、その発現予測につながる因子について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本学の研究支援センター備え付けのLC-MS/MSを使用しており、共同使用の機器であるため、故障によるメンテナンスが頻発しており、使用は順番待ちとなっている。また、連続使用は2日間までとの申し合わせがあるために、定量法の確立が遅れている状況である。また、新たにエルロチニブとスニチニブの代謝活性物の定量法の確立を目指しているため、検討すべき項目が増えている状況であり、現在、継続して検討を行っている。上記の理由から、当薬剤部備えつけのHPLCの利用を考慮しており、検討を進めている。 定量法を確立したゲフィチニブについては、すでに実臨床での薬物相互作用および特殊病態における薬物体内動態を検討し、体内動態の変動要因解析の準備を進めている。 また、臨床試験を実施するに先立ち、チロシンキナーゼ阻害薬による副作用発現状況を後方視的に調査し、薬物血中濃度と薬理効果および副作用発現との関連性を解析するため基盤データ収集を行っている。このことにより、今年度以降に実施予定である薬物動態と臨床効果、副作用発現を関連付ける因子の同定につながる臨床研究を計画できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①できるだけ早期にソラフェニブ、スニチニブ、エルロチニブ代謝物、スニチニブ代謝物の定量法を確立する。当初予定していたLC-MS/MSではなく、HPLCによる定量も考慮する。 ②次に、本学医の倫理委員会に臨床研究計画を申請し、承認された臨床試験を実施する。すなわち、それぞれの薬剤による治療を受ける対象患者がチロシンキナーゼ阻害薬を服用開始し、少なくとも1週間経過した後(定常状態)、外来受診時あるいは入院病棟において採血を行う。患者の同意が得られれば、服薬後経時的に採血を行う。治療効果評価はガイドラインをがん治療効果判定の指標として、最良総合効果を用いて治療効果を判定する。副作用評価は汎用される重症度分類を用い評価する。薬物動態速度論的解析は非線形最小二乗法を用いて各薬物の体内動態パラメータを算出し、さらに、非線形混合効果モデル(NONMEM)を用いて母集団パラメータの推定を行う。薬物相互作用の評価は上記の薬物動態パラメータおよび臨床評価、副作用発現、血中濃度データから、それぞれ相互の関連性について解析を行う。代謝酵素の遺伝子解析はチロシンキナーゼ阻害薬の生体内での代謝に関わる酵素について、その遺伝子多型解析を実施する。以上のデータを用いて、各薬剤について個別化投与設計の方法論について検討を行い、臨床応用の可能性について評価する。可能であれば、その検証のための臨床研究を実施する。
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Causes of Carryover |
LC-MS/MSの共同使用のための費用は安価で、試薬は保有しているものを基本に使用したため、試薬費用が予算以下となった。また、研究器材等についても、当薬剤部にて保有するものをまず使用したため、新たに購入する物品が少なかった。また、臨床症例の後方視的調査を実施したことによる研究費の使用はほとんど無かった。 以上のような理由で、執行研究費が予定額に企画して少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
臨床試験を実施するに当たり、採血、血中濃度測定に必要な物品費が増加することが予測される。また、一部の薬物について、HPLCでの測定を考慮しており、そのために、現在薬剤部備えつけのHPLCの測定感度を上げるために、付属機器の導入を予定している。それに伴い、カラムなどのHPLCに必要な物品も新たに購入する必要がある。 また、研究成果の学会発表を積極的に行う予定である。
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