2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K08096
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
直良 浩司 島根大学, 医学部, 教授 (90243427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 信弘 島根大学, 医学部, 准教授 (30529657)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チロシンキナーゼ阻害薬 / PK-PD / 肺癌 / 腎細胞癌 / LC-MS/MS / 血中濃度 / 耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKIs)を研究対象薬物に設定し、以下の検討を進めている。 ①ゲフィチニブ、アファチニブ、ソラフェニブは活性物質そのもの、およびエルロチニブ、オシメルチニブ、スニチニブは活性代謝物の定量も併せて実施するため、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)法条件の開発を行い定量法を確立した。 ②ヒト慢性骨髄性白血病由来細胞(K562細胞)およびそのドキソルビシン耐性株(K562-ADR)を用いて、耐性癌細胞におけるTKIsの抗腫瘍効果および耐性克服作用について研究を開始した。まず、少量のドキソルビシンを長期間曝露することにより、ドキソルビシンに対する耐性を有するK562-ADR細胞とK562細胞のcell viabilityを測定してIC50算出した。その結果、K562-ADR細胞はK562細胞の10倍以上のIC50であることが確認され、ドキソルビシンに対して高度耐性を有する細胞を安定的に培養する方法を確立した。このK562-ADR細胞はパクリタキセルおよびビンブラスチンにも高度耐性であることを確認した。K562およびK562-ADR細胞を用いて、TKIsの作用メカニズムの詳細と薬物曝露量と抗腫瘍効果の関連性を明らかにし、さらに、殺細胞性抗がん薬に対する耐性を有する癌細胞に対するTKIsの作用メカニズムも検討を開始している。 ③すでに明らかにした結核併発肺癌患者におけるリファンピシンとゲフィチニブの薬物相互作用について、症例報告として英文雑誌に投稿する準備を進めている。 ④TKIsによる癌治療を受けている患者の血中濃度測定および臨床効果の評価については、症例を得られていないため、H28年度における研究の進展はなかった。H29年度は呼吸器・化学療法内科の症例の血液サンプルを採取しているため、薬物濃度測定を行い研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた臨床試験が進んでいないことが、本研究の進捗が遅れている主な理由である。目的とするチロシンキナーゼ阻害薬の定量法は確立できているため、臨床症例の血液サンプルを得られれば、試験が実施できる予定であったが、共同研究を計画している呼吸器・化学療法内科の別の臨床試験の関係で、H28年度は対象症例が得られていない。しかし、H28年度後半には、症例が得られる状況となったため、H29年度にはすでに数名の対象患者の血液サンプルが得られていることから、血中濃度測定および臨床効果を進めることが可能である。 したがって、今年度はチロシンキナーゼ阻害薬の体内動態と臨床効果、副作用発現を関連付ける因子の同定につながる臨床研究が実施できると考えている。 一方で、培養細胞を用いた検討の準備は整っていることから、抗腫瘍作用メカニズムの探求は予定通りに進められると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①血中濃度測定および臨床効果の判定:対象患者がチロシンキナーゼ阻害薬を服用開始となり、少なくとも1週間経過した定常状態以後に血液サンプルを採取し、未変化体、あるいは代謝物の血中濃度を測定する。患者の治療効果評価は最良総合効果を用いて、副作用評価は汎用される重症度分類を用い評価する。 ②薬物動態速度論的解析および遺伝子多型解析:非線形最小二乗法を用いて各薬物の体内動態パラメータを算出し、さらに、非線形混合効果モデル(NONMEM)を用いて母集団パラメータの推定を行う。薬物相互作用の評価は上記の薬物動態パラメータおよび臨床評価、副作用発現、血中濃度データから、それぞれ相互の関連性について解析を行う。代謝酵素の遺伝子解析はチロシンキナーゼ阻害薬の生体内での代謝に関わる酵素について、その遺伝子多型解析を実施する。以上のデータを用いて、各薬剤について個別化投与設計の方法論について検討を行う。 ③アポトーシスの解析:上記の検討で得られた結果から、腫瘍細胞における薬剤曝露および併用薬の影響と細胞アポトーシスの関連を明らかにするため、培養細胞(K562およびK562-ADR)を用いて、次の検討を実施する。 1) Annexin V-FITC/PI染色を行い、細胞のアポトーシスをフローサイトメトリーを用いて解析する。2) 薬剤曝露後の細胞ライセートを調製し、抗casp-3, 9, 8, 2抗体を用いたImmunoblotにより各caspaseの活性化を測定する。これにより、アポトーシスの誘導に関連する経路を特定する。3) 薬物トランスポーターの発現、機能に対する影響を解析する。4) 薬物トランスポーターやその他の関連する機能タンパクの発現を調節する核内レセプター等の発現解析を行う。
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Causes of Carryover |
H28年度の予定使用金額は、研究計画にしたがって使用したものの、前年度未使用分の約30万円については約1万円のみの使用となったため、約29万円の次年度使用額が発生することとなった。H28年度は臨床試験が実施できなかったため、臨床試験関連の費用が未使用となったのが要因と考えられる。また、学会等での研究発表が予定より少なかったことも使用金額の減少につながった。 以上のような理由で、執行研究費が予定額に比較して少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
臨床試験を実施するに当たり、採血、血中濃度測定に必要な物品費が増加することが予測される。また、培養細胞を用いた研究を進めており、培養のための試薬、消耗品の費用および生化学実験のための試薬費用が必要となる。 研究成果を国際学会で発表する予定であり、さらに、成果の症例報告を投稿するための費用が必要となる。
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