2015 Fiscal Year Research-status Report
抗菌薬のPK/PD解析を基盤とした特殊病態化における感染症治療の新たな展開
Project/Area Number |
15K08105
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松元 一明 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (60733160)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抗菌薬 / PK/PD / 特殊病態 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、感染症治療に対し経験的な投与法ではなく、抗菌薬の薬物動態と感染症部位における効果に焦点をあて、PK/PDアプローチから最大限の効果、副作用防止かつ耐性菌の発現阻止を考慮し、患者個別に最適化した抗菌薬投与を行うことが重要とされてきている。一方、高齢社会を迎え、感染症領域においても特殊病態下にある感染症患者が増加の一途を辿ってきている。重篤化しやすい特殊病態下の患者においては、一層の個別化最適投与が望まれているが、病態下における抗菌薬薬物動態についてはほとんど検討されていないのが現状である。特に全身性炎症反応症候群(SIRS)、透析、化膿性髄膜炎、熱傷では分布容積、腎クリアランス、薬物の移行性など、正常時と比べて異なり、薬物動態は非常に複雑になっている。平成27年度は、各抗菌薬の血中濃度測定法を高速液体クロマトグラフを用いて確立し、SIRS患者、透析患者の血中濃度を集積した。 ダプトマイシンはアセトニトリルで除蛋白後、Unison UK-C8カラム、移動相は0.1Mリン酸緩衝液(pH2.1):アセトニトリル:メタノール=110:30:60、検出波長は214nm、流速は1.5mL/min、注入量は20μLで、27分に単一のピークとして検出された。メロペネムは限外濾過法で除蛋白後、Kinetex EVO C8カラム、移動相は0.1Mリン酸緩衝液(pH7.8):メタノール=85:15、検出波長は300nm、流速は1.0mL/min、注入量は20μLで、5分に単一のピークとして検出された。セファゾリンはメタノールで除蛋白後、Luna 5u C18カラム、移動相は0.03Mリン酸緩衝液(pH5.0):メタノール=82:18、検出波長は274nm、流速は1.2mL/min、注入量は20μLで、16分に単一のピークとして検出された。3剤とも再現性よく、0.1μg/mLまで測定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
世界中で抗菌薬への耐性化が進み、現在、抗菌薬の適正使用が推進されつつある。共同研究を行っている慶應義塾大学病院でも感染制御センターが中心となり、抗菌薬の適正使用が図られ、ダプトマイシン、メロペネムの使用患者は減少し、SIRS患者において、平成27年度に予定していた検体数(50~60例)を得ることができなかった。研究計画にも記載していたが、予定の症例数が集まるまで待ち、解析及び検証を行う。したがって、平成28年度においても症例数を集積し、予定の症例数が集まり次第、PK/PD解析を実施する。 透析患者の血中濃度を得るための共同研究施設として、神奈川県立汐見台病院を挙げていたが、経営母体が変わり、共同研究が出来なくなった。そこで新たに共同研究施設として、聖マリアンナ医科大学病院を加え、今後、SIRS患者および透析患者の抗菌薬血中濃度を測定していく。平成28年2月に研究倫理委員会の承認を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
特殊病態下(SIRS、透析、化膿性髄膜炎、熱傷)において、各種抗菌薬が使用され、研究内容を説明し、同意が得られた患者を対象に本研究は行う(連携施設及び申請者所属施設の倫理委員会の承認を得た上で実施する)。平成28年度はSIRS患者はダプトマイシン、メロペネムの症例数が集まり次第、PK/PD解析を行う。透析患者は症例数が少ないため2年間かけてセファゾリン、ダプトマイシン、レボフロキサシン、新たにメロペネムを加え、データ収集及び解析を行い、その後検証を行う。化膿性髄膜炎(セフォゾプラン、メロペネム)及び熱傷(ダプトマイシン)は平成28年度からデータ収集を行い、平成29年度に解析、検証を行う。 実験方法としては、血液、化膿性髄膜炎患者の髄液、熱傷患者の壊死した皮膚組織のサンプル(1回2 mL、2~5回)を経時的に採取する。得られた血液等サンプル濃度より、2または3-コンパートメントモデルに従い、非線形最小二乗法解析プログラムを用いて、薬物動態解析を行う。さらに、症例毎に効果および副作用の評価を行い、PK/PD解析を実施する。目標症例数については、SIRS患者においては50~60例、他の研究に関しては10~20例を予定している。
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